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ぼくはねこ
7.

考えておいて、とだけ言われ屋敷の中へ入って行ったジューンを最後まで目で追う。

現実だろうか

(ジューン様がぼくのことを?)

撫でられた耳を自分で触り、さっきの言葉を心の中で繰り返す。

(嫌な訳がない)

嬉しくて涙が滲む。
ぼやけてはっきりしない視界に、いきなり白い何かが入る。

「な、なに?」

急いで服の袖で涙を拭う。

(ルナ?)

「え?」

白い何かは鳥だった。
とても小さいが、多分大人だとおもう。
なぜ自分の名前を知っているんだろう。

「だれ?」

ぱたぱた飛ぶ姿が可愛く、手を伸ばす。
素直に乗り降りてくる鳥をまじまじ見ても誰だか思い出せない。

(ぼくチロル。ルナの事はカイから聞いてるよ)

そういう事かと納得し、滑らかな羽にゆっくりと手を這わせる。

(おめでとう。さっきの聞いてたよ)

「え?!」

(ははっ顔まっか)

かわいー、と言われて自分でも湯気が出ているんじゃないかと思うほど顔が熱い。

「嘘じゃないよね。本当なんだよね」

(あたりまえだよ。ジューン様が嘘なんかつくわけないよ)

トントン飛びながら肩の方に移動し、頬ずりしてくる。

「ぼく今までで1番幸せ…」

噛みしめるように目を閉じ、ジューンを思い出す。

少ししてから自分の肩を見るとすでにチロルはいなくなっていた。

見渡しても姿が見えない。
とても気まぐれな性格なのだろう。

カイに聞いて今度会いに行こう。




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