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ぼくはねこ
6.

だんだん落ち着いて行き、正気を取り戻すと恥ずかしさでいっそ消えてしまいたいと思った。
意味のわからない事を泣き叫ぶルナをうっとうしいと思っているに違いない。

「大丈夫かい?」

「ご、ごめんなさい」

「いいんだよ。それとね、ルナ。私はセシルとは結婚しないよ」

「え??」

目が点になるとはこの事だろう。

ではジューンはセシルを好きではないという事だろうか?
でもそしたら何故ジューンはルナにあんな事を?

答えも出ないのにぐるぐる考える。
聞きたい事がたくさんあるのに声が出ない。

「それよりさっきの身代わりって何の事だい?」

「……」

言いたくなかった。
黙ったままでいたら、それ以上追求せずに庭に出ないかと手を差し伸べられた。






外に出てみると快晴だった。
こんな日にカイとシノで湖に行けばとっても気持ちいいに決まってる。

カイの小屋の方を見ると中に入っているのか姿は見えなかった。

「ルナ、カイはあそこにいるよ」

ジューンの指さす方をたどると花畑の中に座っていた。
遠くなのであまり良く見えないが全く動いていないところをみると、うたた寝しているのかもしれない。

あそこまで行ってカイの背中に乗りもふもふの毛に埋れたいと思ったが、今は隣にジューンがいる。

手を引かれて連れて行かれたのは大きな木の下だった。
確か昨日ジューンとセシルが話していた場所。

「今日はいないなぁ」

上を見上げ何かを探してるみたい。
それが何かはルナにはわからない。

さわさわ風が吹いてとても気持ちがいい。
目を閉じるとまるで音楽のように耳に入ってくる。

「ルナ、私とここで暮らさないか」

「え、」

この前シノにも同じような事を言われた気がする。
あの時は断ったが、今は頷きたい。

(このままジューン様の近くにいれたら…)

と思ったが幸せなのと同時に不幸なのではないか。
毎日好きな人が他の人を愛しているのを目の前で見るのだ。
幸せなわけが無い…
でも…

「恋人になってほしい」


こいびと??

「え?」

「結婚してほしいんだ。」

自分では気づかないうちに垂れていた耳がぴーんと立っていたらしい。
ジューンは愛おしそうにそれに触れ、目を細めた。



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あきゅろす。
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