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ぼくはねこ
3.

しばらくルナを叱ってから気がすんだのか朝ご飯を食べに部屋からセシルが出て行った。

ドアがきちんと閉まったのを耳で確認してから布団から顔を出す。

時計を見ると朝八時。


明日、もしかしたら今日あの1人は婚約を発表するだろう。
そしてルナ達は村に帰ってまたいつもの暮らしに戻る。

ただそれだけの事なのに
こんなに悲しい…


クーン、

鳴き声がして窓の外を見るとカイがいた。
ルナの部屋は2階で、ここからだとカイを見下ろす事になる。

手を伸ばして頭を撫でてやると嬉しそうに尻尾を地面にパタパタと叩きつける。

「僕の方が高いよ」

(そうだな)

クスクス笑い合いながら戯れる。

(シノ様がまだ来ないんだ)

それはきっと僕のせいだ、と思った。
シノは真面目だからルナを傷つけたと思って自分を責めてるだろう。
何も悪くないのに…

「僕、ここに来ない方がよかった…」

(どうして?)

「だって」

(しっっ)

カイはルナの言葉を遮り耳をピンと立てた。
何かが近づいてくるようだ。

「…なに?」

(ジューン様がここにくる)

「え!」

ルナもカイの真似をして小さな耳をドアの方へ向けた。
…何も聞こえない。
猫は犬よりかは聴力が劣る。

それでもじっとそうしていると何かの足音がこっちに向かって来たのがわかった。

「カイっ飛ぶから受け止めてっ」
泣きそうになりながら窓枠によじ登ろうとすると

(ルナ、)

と真っ直ぐな目で返された。

「……」

カイはどんどんルナの部屋から遠ざかり、伸ばした手が宙に浮く。

でもこわい
聞きたくない
カイが思ってるほど僕は強くない。

…コンコン、と遠慮気味に叩かれたドアの向こうにはきっとジューンがいる。

もしその隣にセシルがいたらルナは邪魔者だ。


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あきゅろす。
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