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ぼくはねこ
1.

コンコンコン…

誰かがドアを叩く音がする。
それはとても小さくて、暗闇の中に溶けていきそうなくらい繊細な音。
でもその後に何回も続き、焦っている感じもする。

寝ていたジューンは起き上がり時計を横目で見た。
(3時…)

こんな時間に訪ねてくるなんて、まさか執事ではあるまい。

ルナかもしれない、と少し期待を胸にし扉を上げるとシノが立っていた。
とても深妙な顔つきで…



取り敢えず中に入れ椅子に座らせる。
これはただごとではないな、と思わせるくらいシノは緊張している。
相手がしゃべり出すまでこちらも話し掛けないでおこうと思った。





「…ルナは」

心臓が跳ねた
ここでその名前が出てくるとは。

「ルナは俺の事を好きなのかもしれないっ」

「………え?」

お互いに見つめ合う。
ジューンの方はまだ理解していない。

「だ、だから」

「わ、わかった。わかったから。…なんでそのように思ったんだい?」

そう聞くと急に赤面し、目をうろつかせる。



「キ、キ…キキキ、キ……スされ、された」

今までないくらいのどもりようだった。
ジューンの方は驚きで声も出ない。

「こ、こんな事兄さんくらいにか言えなくて…どうしたらいい?」

その表情からは本当に困っているのがわかる。
「シノはルナの事をどう思ってる?」

「そういう対象としては見れない。可愛い奴だとは思うけど…」

その言葉には迷いがなかった。

「そうか、」


心のどこかでホッとしている自分がいる…
これはもう言い逃れが出来ないかもしれない…


「兄さん?」

「あ、あぁ。…」

ルナはシノが好きで、ジューンはルナが…
シノがルナを何とも思っていなくてもその構図は変わらない。

「はぁ、」

自然とため息を付く。

「取り敢えず様子を見てみたらどうかい?勘違いかもしれない」

「うん…」

納得しないままシノが部屋から出て行く。

よろよろと椅子に座りジューンは目頭を押さえる。




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