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ぼくはねこ
4.

部屋を覗くとセシルはいなかった。
でも他に見当のつく場所がない。

「散歩しながら姉さんを探そうかな」

ドアを閉め、廊下を歩き始めた。
2階に登り、庭全体が見渡せるバルコニーに出る。

「気持ちいい〜」

ぐっと背伸びをし、深呼吸をする。

「あれ?セシル姉さんだ」

木の下にセシルが立っていた。
その隣にはジューンもいる。

2人でなにやら楽しそうに話しているのがわかる。

(…何を話してるんだろう)

その時、ジューンがセシルを見ながら本当に愛おしそうに見つめた。
その顔にドキっと胸が高まる。

(そういえばジューン様は"一緒にいて楽しい人"を選ぶって言ってた…)

もしかすると選ばれるのはセシルではないか、と考える。
あんなに楽しそうに他の娘と話しているのを見た事がない。

自然と涙が出ているのに気づかないルナは羨ましそうにセシルを見つめる。

ルナとセシルは稀に似ていると言われる事がある。
小柄で庇護欲を掻き立てられるルナはどちらかというと女顔だった。

(もしかしたらあの夜も僕を通して姉さんを見ていたのかも…)

あの愛おしそうにルナの名前を呼んでいたのも上辺だけだったのか。

「ぅ、ぅ」

止めどなく涙が頬を伝う。


(だいたい僕なんかが恋なんてしたのがいけなかった…受け入れられないのを知ってて…なんてバカなんだろう…)



「ルナ?」

「…シノ」

振り向くとシノが立っていた。
ルナが泣いているのに気づき、相当慌てている。

「な、何で泣いてるんだ?またいじめられたのか?!」

「ち、ちが」

「俺が言ってきてやる」

「違うよ!…ちがう」

全身でシノを止め、胸の辺りに顔を埋める。

「ぅ、う〜」

困ったシノはただ無言でルナの頭を撫でてやる。

「何があったは知らないが、俺とカイはお前の見方だからな」

そう優しく声を掛ける。

「…」

そっと顔を上げてシノの頬にキスをする。

「…ありがとうございます」

(僕にはもったいない言葉…)


"風邪を引いてしまいますね"といい、バルコニーから先に出る。

シノがどんな表情をしているかなんて、その時のルナは知らなかった。






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あきゅろす。
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