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ぼくはねこ
1.

あれからまた数日が経った。
ジューンは仕事がよほど忙しいのか、めったに顔を見せなくなっていた。

娘達もずっと部屋にこもっているのがだんだん退屈になってきたようだ。

朝食を食べ終わり、執事が食器の片付けをしている時、セシルと数人の女がルナにお使いを頼んだ。

「で、でも行き方がわかりません」

「森を抜けたらすぐって言ってたわ。新しい服を買ってきてちょうだい。」

本当に服が欲しいわけでは無いと思う。
着替えは十分過ぎるほど持ってきたはずだ。

ただ単にルナをいじめたいのであろう。
自分たちはつまらないのにルナはシノと遊んで楽しそうだから。

今日はエマが体調が悪いらしく朝食を食べに来ていないので止める人がいない。

「…わかりました。」

シノに付いてきてもらおうか
そんな事を考えていると
「あの赤い髪の子は連れて行ってはいけないからね」
と釘を刺された。

トボトボと渡されたお金を持って部屋を出ようとすると1番この中で若いチロが心配そうに声をかけてきた。

「ルナ、大丈夫?」

「大丈夫。夜までには帰ってくるよ」

上手く笑えていたかはわからないが、微笑んで部屋を後にした。


やはり内緒でシノに…と思ったが、迷惑になるのでやめておいた。


だいたい地図も持っていないのに森を抜けれるのだろうか。
でも行くしかない。

朝なのに森の中は木が生い茂っていてまるで真夜中のように暗い。
自然と涙が滲んでまえが見えずらくなる。

(よしっ)

ここで怖気着いていても仕方が無い。
一歩踏み出そうとしたとき

「ワンっっ」

と背後から鳴き声がした。

「カイ!!」

全速力で走ってきたカイがルナにぶつかる手前でとまり"クーンと"と言いながら顔中を舐め出した。

「来てくれたのっ?」

(森の中では俺の背中に乗るといい。)

「ありがとう!!カイ大好き!」

カイはルナが乗りやすいように屈んでくれて、ふわふわの毛を掴み、

(行くぞっ)

「うん!」

そう言うのと同時に駆け出した。


暗い森の中で木を確実に避けながら走る。
振り落とされない様しがみつくので精一杯だ。


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あきゅろす。
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