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ぼくはねこ
8.

何回か繰り返して疲れた途端ドサッとルナがジューンにもたれ掛かる。

「ルーナ、終わりかい?」

「……」

お腹に埋もれているのでジューンからはルナの顔が見えない。
ぽんぽんと頭を叩く。
返事もない。

(まさか寝た?)

動き出す様子もないのでグッと顔を上げさすと。
「ぅ〜」
とまた擦り寄ってくる。

やはり眠っている。
ずっと寝顔を見ていたいと思うのは何故だろう。
この子を弟の様に思っているのかもしれない
シノは幼い頃から動物と遊ぶのが好きで、あまり2人で遊んだ記憶がない。
その分ルナを甘やかしたいのかもしれない。

それでも仕事がまだ残っているのでルナを抱いてベッドに横たえてやる。

そっと起こさないように部屋から出て仕事部屋に向かった。






* * *



眠たいなぁ
まだ寝ていたい
だってこのベッドふわふわで気持ちぃ

「ルナ」

いきなり耳に入ってきた男の声
途端にすっきり目が覚める。

目の前にはシノの顔が飛び込んできた。

「わわわっ」

寝起きの顔が恥ずかしくてシノから離れようと後ずさる。

「ルナ、お昼寝か?」

「ぁ、…」

「ルナ、その子だれ?いきなりノックもなしに入ってきて迷惑よ」

何時の間にか帰ってきていたセシルは真っ赤な髪の男の子を不信そうに横目で見る。
まだ誰なのか知らないのだ。

「あ、この人は、」

「ルナ、それより俺の部屋に来い。いいもの見せてやる」

そういうと返事も聞かずにルナの腕を引っ張り自分の部屋に案内した。

そういえば…
忘れてた!

寝る前にジューン様が部屋に来ていたんだった!
それで猫じゃらしで遊んで…

遊んで疲れて寝たんだ…

ジューン様も呆れてるに違いない。


「ん?どうした?顔が真っ赤だぞ」

「え、いいえ、なんでもないです」

「そうか、ここだ」

ガチャっと扉を開けて中に入ると
「キナコっ」
とシノが誰かを呼んだ。

コソコソコソ
と何処からか聞こえる。

「ルナ、肩」

「え?」

シノはルナの右肩を見ている。
何かわからずに見てみると

「わっ!」

「はははっ」

肩には動物がちょこんと乗っていた。
これはリスだ。

「か、かわいい〜」

(ありがとう!)

ルナの首筋をクンクン嗅いでくる。

「こ、こしょばい」

(良い匂いがする〜)

「キナコはルナの事が気に入ったみたいだな。今日湖に行った時に友達になったんだ」

キナコというリスはとても珍しい色をしている。
ルナ達が住んでいた村にはこんな種類のリスはいなかった。

撫でたりして一緒に遊んでいると不意に
「ルナ、兄さんが花嫁を決めた後もここで暮らせばいい」
とシノが言ってきた。

「え?」

「兄さんもきっと許してくれる。ルナは俺の友達なんだから!」

「あ…」

ともだち…

(こんな僕を友達と言ってくれるなんて)

「あ、ありがとうございます。その言葉だけで充分です。それにまたすぐに遊びに来ます…もし良かったら」

「そうか。じゃあ俺もルナに会いにいく!カイに乗って!」

「はいっ」


(シノ様に出会えてよかった!それにジューン様!あの人の優しい眼差しを思い出すたび心が満たされる)

「見ろ、もうすぐ夕陽が沈む」

シノが立ち上がり大きな窓の側まで行った。
それを追うようにルナも窓に近づいた。

「俺はこの瞬間が一番好きだ…これを見せたかった」

「……」

綺麗…

橙色の太陽がゆっくり森の中に溶け込んでいく。
そして完全に見えなくなるまでルナとシノはその光景に魅入っていたのであった。










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