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ぼくはねこ
7.

さっそく2人で湖に行こうとしたところでジューンがそっとルナの手を引いた。

「ルナ、お姉さん達が君を心配したままだ。1度顔を見せに行こう」

「そ、そうですね。シノ様、また今度誘ってください」

「わかった」

またカイの背中に飛び乗ったシノはあっという間に森の中に消えて見えなくなった。


「本当に仲が良いんですね」

「そうだな。あの2人はほとんどの時間を一緒に過ごしているよ」

「……」

目の前に広がる森をずっと見ていると吸い込まれていきそうで少し後ずさった。


ルナは今までの人生で友達が出来た事がない。
それで別に構わないと思っていた。

でもあの2人を見ていたら、自分がとても寂しく感じる。


ともだち…
もし本当に心から信頼できる人が1人でもいたら…






* * *



部屋に戻るとエマがルナの元へと駆けつけてほっと息をついた。
そして"これからは無断で外には出ない事"と約束をさせた。
エマは他の娘達にも知らせて来る、とだけ残して部屋から出て行き、残されたルナはセシルに
「ごめんなさい」

と謝った。


「別にあんたなんかどうでもいいわよ」
と言いたげな視線だけを向けてきたセシルから逃れるためベッドに潜り込んだ。

少しうとうとしてきた時にセシルが部屋から出ていく音がした。

多分ジューン様の所に行くんだろう。
ヒマさえあれば娘達はジューンに自分をアピールしに行く。

そんな輪の中にルナが入れるわけもなく部屋でぼんやりしているしかない。

(掃除しよっかな)


そうと決まれば今日はどこを綺麗にしようか、と考えながら箒を取りにいこうとしたら
コンコン
とドアが叩かれた。

(誰だろう。セシル姉さんはドアなんか叩かないし)

恐る恐る扉を開けるとそこにはジューンが立っていた。

「ジ、ジューン様?!どうして」

「とりあえず中に入れてくれるかい?」

「は、はい」

ジューンがここに来る意味がわからず困惑する。

「あ、あの」

「ルナは耳が可愛いね」

不意に耳を触られたルナは驚いて「ひゃっ」と小さな叫び声をあげてしまった。
ただ耳を触っただけのジューンは、そんなに驚かれた驚きで固まっている。

「ご、ごめんなさい。ね、猫は耳が弱いんです」

真っ赤になって自分の耳を抑えるルナが可笑しかったのかクスクスと笑う。

「どこまでも可愛いな」

「そ、それより、姉達が多分ジューン様を探してると思うんです」

しっかり耳を隠しながら上目遣いで言う。

「知っているよ、逃げてきたんだ。あの子達は自分のいい所ばかりを一斉に伝えてくる。でも私はそういうのではなくて一緒にいて楽しいと思うん子を選びたいんだ」

「は、はぁ」

「それより」

いきなり話が変わってジューンがズボンの後ろポケットを探りだした。

「これをルナにと思ってね」

見せられたのは猫じゃらしだった。
最近は数が減ってしまってルナ自身も本物をみたのは2回目だった

フルフルと先の部分をルナの目の前で揺らされる。

「………」

全神経を集中させ猫じゃらしを見つめる。
ふと我に帰ったルナはふるふると頭を振った。

「ぼ、僕もう子供じゃありませんっ」

「そうか、残念だな。じゃあこれはチロにあげようか」

チロとは今回の娘達の中で1番幼い14歳の女の子だ。
といってもルナと背丈は変わらず密かにライバル視をしている。

「…や、やっぱり僕に下さい…」

「ふふ、もちろんいいよ。」

またすぐに猫じゃらしを揺らし始めたので今度は躊躇なくそれに向かって行った。

「にゃっにゃっ」

捕まえた!と思えばするっとかわされ、それの繰り返し。




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