ぼくはねこ
1.
「私の妻はマツリとする」
それを聞いた途端、歓声が湧き、マツリ姉さんは嬉しさのあまり涙した。
ルナの姉がまた1人、お嫁にいった。
* * *
「今度のジューン様も猫族にしたそうよ、本当やになっちゃう」
「そうなの?!また猫か。私あの種族あんまり好きじゃないのよ。なんか気取ってて」
「ねー」
そう喋りながらルナの目の前を通り過ぎて行くのは兎族の若い娘
兎の特徴である長い耳をピンと立てていると思ったらヒョイっと先端をルナの方に向けた
「あそこにいるの、猫よ」
「でもあれは男じゃない?」
横目でじろじろルナの事を見てから悔しそうに舌打ちをした。
その視線から逃げたくてルナは早足で市場へ向かった。
この国には色々な種族が存在している。
中でもほとんどの割合をしめているのは犬族。
ただ、人間もいるが少し他のとは扱いが違う。
人間は気に入った種族を選び、結婚相手を見つける特権があるのだ。
それがこの国の慣わし。
最近、猫族が選ばれるのが続いた所為で今のように陰口を言われるのが多くなった。
昨日もルナの姉、マツリが嫁いだばかり。
皆、人間の嫁に行くと働かなくていいし、一生楽が出来るからと、どうにかして自分を貰ってもらおうと皆、必死になる。
(早く頼まれた物を買いに行かないと姉さん達に怒られる)
ルナはさらに足を速めた。
「ちょっとルナ、食材買いに行くのにどれだげ時間かかってんの」
「ご、ごめんなさい」
「ふん、ほらかして」
ルナの手から買い物袋を奪い取ったセシルは今日もイライラしてる。
姉であるセシルは自分の気に食わない事があるとすぐにルナにあたるのだ
食事が終わってから食器の後片付けに掛かろうとした娘に一人の女が口を開けた
「今から呼ぶ子は、ちょっと集まっておくれ」
そう言ったのはエマ
若い娘たちを取り仕切ってる人だ。
皆から"エマおばさん"と呼ばれて親しまれている。
どんどんその周りに名前が呼ばれた娘が群がる
「もう知ってる子もいるだろうね。今度ジューン様が猫族を是非嫁に、と」
「「きゃーーっ」」
まだ言い終わらないうちに選ばれた女達が歓声をあげた
ジューン
噂ではとても美しく優しい人だとか…
そんな人のお嫁になれるかもしれないのだから喜ぶのも当たり前だ
「出発は明後日だよ。それまでに荷造りしておいで。」
男は大抵10歳になると外で仕事をしにいく
ルナは16歳だ
本当ならとっくに男にまじって外で働く年頃だ
「エマおばさん」
「なんだいルナ」
「あの、明後日、僕もまた付いて行ってもいい?じゃまはしないから」
「どうせダメだといっても付いてくるんだろう。」
そう言って奥の部屋にエマは入って行ってしまった
言葉足らずなのはいつもの事
一見素っ気なく思えるが、本当はすごく優しい人であることをルナは知っている
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