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ハニー*ハニー
ライバル



俺が通う高校は部活動に力を入れていて、その中でも野球とサッカーが他の追随を許さなかった

中学では名の知れた者も、ここに来るとあまりの過酷さに沈下してゆく

‥実は俺もその中の一人だった

昔は" 鬼才 "だのなんだのと持て囃されていたのに、高校に入ってからは" 自惚れ "や" 天狗 "と馬鹿にされた

それでも言い返す事が出来なかったのは、先輩たちが本当に上手かったからだ

うん、上手かった

‥いやでも、‥‥厳しすぎ



「ゴラアアアア!!
テメェぶっ殺すぞぉおあああ!!」


グラウンドに響くけたたましい雄叫びに誰もが視線を一点に集中させた

すると"またか "なんて一息吐いて皆呆れ顔をする

本当、毎回毎回 騒がせてすみませんね

‥‥うちの部長、イカれてるんです


はぁと溜め息を漏らした俺の名前は加賀谷 大貴(かがや だいき)

現在高2で、野球部に所属中

1年の時に散々バカにされたのをバネにして、今ではそれなりの成績も残している


「大貴!!
そいつ捕まえろ!!」

グラウンド内をバット片手に走り回るこのおっかない人は、野球部部長、斉野 仁(さいの じん)

陰では"サ〇ヤジン"と呼ばれているが、言ったら殺されるので秘密でお願いします


「せ、先輩‥っ
助けて‥‥!」


俺の元に逃げてきた後輩は、涙ながらに俺の後ろに身を隠す

実はこの後輩、さきほどフリーバッティングの時に斉野部長にボールを当ててしまったのだ

そりゃ怒られるわな


斉「‥大貴、そいつ寄越せ」

『はい』

「えぇ!?」


許せ、後輩

俺も自分が一番可愛いのさ



「二度と帰って来るな、このヘボ」


俺が後輩を斉野部長に受け渡したその瞬間、俺の後ろ側からそんなドスの効いた声が耳に届いた

思わずゾクリっと背中に寒気を感じながら振り返ると、サッカー部がなにやら一悶着あったらしい


「腑抜けた事言ってんじゃねぇよ
‥お前、殺すぞ?あ?」

「す、すいませ‥」

「あーあ
ヘタレ野球部の陣地にボール入っちまったじゃねぇか」

斉「‥あ?
あいつ今なんっつった?
大貴、聞こえたか?」

『‥‥‥』


コロコロと俺の足下に転がってきたボールを斉野部長は冷ややかな目で見つめ、そしてチラッとグラウンドの真ん中に聳え立つ照明灯を見やった


斉「‥‥大貴、越えたか」

『あー‥越えた‥‥っすかね』

斉「ゥウウオォオオラァ!!!!」


物凄い勢い形相でサッカーボールをバットで撃った斉野部長のその球は、光の如くサッカー部部長の頬を擦れる


斉「死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!
死ね酒本(さかもと)!!」

酒「うるせぇ死ね」

斉「っだとゴラ!?
協定を破ったのはテメェだろうが!!」

酒「は?意味不
破ったの俺じゃねぇーし
クソの後輩だし」

斉「生言ってんじゃねぇ!!
後輩の尻拭いは部長の勤めだろうがっ!!」


それ、あんたが言うのか

今日も始まった部長同士の喧嘩に、俺はバリバリっと頭を乱暴にかいた


皆さんもお分かりの通り、うちの野球部部長とサッカー部部長は手の付けられない程にお互いを嫌い合っている

そんな2人の喧嘩を減らす為に作られたのが、"協定 "

グラウンドを調度半分に別つ照明灯を基準に、右側をサッカー部、左側を野球部が使い、その境界線を越えて行き来したら行けません

‥っていうのが本来の協定なんだけど

何故だかこの2人はボールが基準を越えたら殴り込みに行く

という協定に勝手に書き換えてしまったのだった



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あきゅろす。
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