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すくーるでい(桃瀬様へ)



・REBORNの初代さま

・すれ違いネタ(?)











本当は運動が苦手だった。
でも、こっちの国の洒落た雰囲気に馴染むのが照れくさくて、わざとじゃじゃ馬みたいな生活を送ってきた。
おかげでいつも服や頬に土汚れが付いているような子になってしまった。



けれど、おてんば娘でいることも、いつしか楽しく思えるようになっていた。
汚れや擦り傷だってこっちの国の子と仲良くなれた証拠だ。今では気に入っている。
今年、学校を卒業する。
一応は留学生の身分だったけれど、もう日常生活には困らないくらいの言葉は何とか身に付けられていた。
相変わらずの泥と汗の滲んだブラウスで、私は校門を飛び出した。
きょろきょろと道行く人達の顔を伺いながら、なるべく足を休めないように進む。

「おーい、ジョット!」

目当ての人影を見つけた瞬間、息継ぎを考えずに思わず叫んだ。
呼吸を荒げながら、額の汗を袖で拭った。
全力疾走というものは短距離でも疲れる。

「…主人公」

振り返った金髪のやや小柄な少年は、少し驚いたような、意外そうな表情をしていた。
少しだけ風が吹き抜けて、私の長い黒髪がばたばたと揺れた。

「…どうしたんだ?そんなに…」

思ったより体力の消費が激しくて、私は両手を膝に付いた。
ジョットは早足でこちらに駆け寄った。
平気だって、と強がるようにわざと大きな声をだした。
貧血になったみたいに頭がくらくらして、私を軽くかぶりを振った。
本当は、私はあまり体が丈夫じゃなかった。
大きくなってからは大分改善されてきたけれど、どうやらそのことをジョットには感づかれてしまっているらしい。
時々聡いのが、こいつの気に入らないところだ。

「べつに…。最近付き合い悪いからさ、どうしたのかなって」

卒業という別れを惜しむように、放課後は学友の皆で馬鹿騒ぎして遊び暴れているというのに。
少し前からか、気づくとジョットは授業が終わるとすぐに教室から抜けていってしまうようになっていた。
最初は何か用事か、習い事でも始めたのかと思っていた。
ためしに聞いてみると、『家の仕事を少し手伝うようになった』。
そう曖昧に返された。
…でも、見てしまった。ちらっと、教室の窓から。
早足で校門を出ると、ジョットは外で待っていたらしい物々しい正装の男と二、三会話していた。
召し使いという様子でもないのだが、その男は従者のようにジョットに対してうやうやしい態度をとっていた。
ジョットのことは、前からどこかの家のおぼっちゃんなのかな、なんて思っていたりしたが、迎えをよこすなどご苦労なことだ。
そして、こっちに来てから知った、自動車という高価な乗り物に二人が乗り込むのが見えた。
家の仕事、手伝ってるだけって言ったのに。
思い過ごしではなく、日に日にジョットの表情は張り詰めていくような気がした。

「…家の仕事が忙しくて」

また誤魔化すようなことを言う。
まだ、あの真っ黒い車は来ていないようだった。
今日は先生が早めに授業を切り上げたせいかもしれない。
私はいきりだつのを堪えて、服の裾を握り締めた。

「で、でも、毎日?たまには遊ぼうよ。ジョット、日本の遊び教えて欲しいって言ってたでしょ?」
「…ジャッポーネの…」

その誘いは些か魅力的だったのか、ジョットは少しだけたじろいだ。
けれど、申し訳なさそうにすまないとだけ答えた。
私はぐっと唇を噛み締めた。
まだ引き下がらない。

「じゃあ、じゃあ、明日にでも、一時間くらい授業さぼろうよ?他の皆も誘ってさ。そしたら遊べるでしょ?」
「…主人公」

この申し出も、何となくジョットが断りそうなのは分かっていた。
それでもわがままを言わずにいられなかった。
このままジョットだけが重苦しい雰囲気を纏い、皆より早く大人びていくのはいやだった。

「…学校も…しばらく来れなくなるかもしれない」
「………」

少しだけ俯くと、地面にぽたぽた染みができるのが見えた。
前方から息を呑む気配があると、目元の辺りを柔らかいハンカチで押さえられた。
肌触りのいい、絹のハンカチ。
子供の癖に、ジョットはいつのまにかこんなのまで持つようになっていた。

「主人公…俺は」

ジョットが、何かを伝えようとした。
本当のことを言おうとしてくれている気がした。
けれど、無常にも後ろからしたドアが開く音に遮られてしまう。
ジョットが咄嗟に私を後ろに隠すように振り返ったのが分かった。

「時間通りのはずだけれど、待たせたの?」
「…お前が迎えに来るなんて、どういう風の吹き回しだ?」

ジョットはすっと低い声になる。
せっかく、せっかくいつものジョットに戻りかけたのに。
車から降りてきた人はいつもの厳つい男性ではなく、私たちとそうかわらない歳の男の人だった。
切れ長の目に、落ち着いているけれど威圧感のある人。
驚いたことに、私と同じ東洋人の顔立ちをしていた。

「この乗り物に少し興味があっただけだよ」

こんこん、と車体をその人は小突いた。
やはり東の生まれなのだろうか。自分と一緒で車が珍しいらしい。
じっときつく睨みつけていると、その迎えにきた男の人は私の存在に気が付いたらしかった。

「何?この子」

この人が何やら怖くて強い人だとは素人目にもわかっていたけれど、私は勇気を出して足を踏み出した。
ずいっとジョットとその人の間を隔てる。

「…ジョットは絶対連れて行かせないからね!」
「……この小汚いの、君の?」

切れ長の目の東洋人は、私を指差して問うた。
小汚いの。
確かにちょっと汚れちゃってるけどさ。
私は少しでもジョットからその東洋人を遠ざけようと、俄然と手を前に突き出した。
後ろでジョットが少し焦った声で私の名前を呼ぶのが分かった。
ジョットは小柄なくせに大人ぶったやつだから、こんな声を出すのは珍しかった。
やはりというかなんというか、その男の人の細っこい指先からは想像もできないような力で、私は一瞬できりきりと締め上げられた。
結局、片手一本で私は完封されてしまった。

「邪魔ならどかすけれど」
「手荒いことはするな」

ジョットは制するように言った。
するとその東洋人は、なぜかちょっとだけ含み笑いをして私を離してくれた。
私を品定めするみたいな目でじろじろ見つめる。
むかついたから、さっきよりもっともっときつく睨んでやろうと思ったけれど、情けなくも私は地面にへたり込んだ。
その人の力のせいなのか、私の体の本能的なものが身の危険を感じていたのか、軽く腰が抜けてしまったようだった。

「主人公、大丈夫か…?」

私の体に力が入らないのを何かの疾患かと勘違いしているらしいジョットは、いたく心配した様子で私に触れた。
そしてそのままふわりと持ち上げられる。
ジョットは絶対に非力だと思っていた私は、またどこか心が空虚になったような寂しさを感じた。

「部外者お断りだけど」
「どいてくれ。主人公を介抱する」

狭い車内の座椅子に座らせられる。
続いてジョットも乗り込む。

「主人公」
「…せまい」

車の中からは、香水やたばこの混じった臭いがした。
全然知らない所に来てしまったような不安を感じて、私はぴったりジョットに寄り添った。

「早く発進してくれる?この車にも飽きてきた」
「てめっ、命令すんなっ」

運転席に乗った柄の悪そうな人は渋々車の操作を始める。
ゆっくり車が動き出す。
どこに向かうのかはわからない。
でも、ジョットは隣にいる。
少なくとも、もう少し傍にいられる。

「……あ」

車内に取り付けられた鏡に、髪の毛がぼさぼさに乱れた自分が写っていた。
さすがにこれは気恥ずかしくて、手でさりげなく撫で付けて直そうとする。
まったく、祖国にいたころは、毎日かかさず母さんが梳かしてくれていたのに。

「…あの、ジョット…」

もしかしたら、ジョットの身内の方に会うかもしれないのに。
こんな格好で大丈夫なのかな。
そう訊ねようとした。
けれど、返事は返ってこなかった。
とすん。
肩越しにずっしりと重みを感じた。
やがて、すやすやと寝息が響いてくる。

「最近、気を張っている様子だったからな…」

運転席に座っている男の人はぽつりと呟いた。
やっぱり疲れていたんだ。
運転席の人はちらりとこっちを一瞥した。
どうやら本気で心配しているらしい。
…だからってまだ信用しないけれど。

「女、俺たちのボスに迷惑かけんじゃねえぞ」
「…迷惑はそっちだもん。顔に刺青なんていれて。不良」
「けっ、見たところ留学生のようだが…。こいつにかかっていくなんて、とんだじゃじゃ馬娘だな」

こいつ、というのは助手席に座って眠たげにあくびをしている東洋人を指しているのだろう。
やっぱり、荒事に慣れた人だったらしい。

「…こちとら成金育ちの小娘だもん。世間知らずなの!」
「…そうかよ」

運転席の男は、それ以上何も言わなかった。
…ジョットがボスとやらの才覚があることも、自分の意思でその役割を担っていることも、何となく分かっていた。
だから離れていってしまいそうなのが怖かった。
でも、ジョットがちょっと迷いを感じているのも、私が呼び止めた時、どこか嬉しそうな顔をしてくれたのにも、気づいてしまった。

「…ジョット、いつが絶対、私がもっと優しくて楽しいところに…」

連れて行ってあげるからね。
ジョットにだけ聞こえるよう、耳元で呟いた。
…ふわふわ。
目の前で金髪が揺れる。
ちょっとだけ頷いてくれたように見えて、一瞬どきりとした。
……ふん、どうせ車の進む振動のせいでしょ。
照れ隠しに、わざと強めにぽふぽふ撫でた。











スク−ルデイズ












あとがき&補足

IOの桃瀬様誕生日祝いその1でした!
初書きりぼーん夢でした!
初代さんは一体どんな性格なのか探り探りで…!
うそ臭くなっていたらすみません^^;
もうすぐアニメで初代編?みたいなのが始まるらしいですが、それを見たら初代さんがどんな人なのか分かるかもしれませんね。
ちなみに、謎の東洋人は初代雲さんで、運転席の人は初代嵐さんのイメージ…です!
分かってもらえたでしょうか(汗)?
こちらも捏造想像で書いてしまったので、うそ臭かったらすみません><!
ウィ○とかでも調べたんですが…!
私個人の中では主人公のお母さん(といっても曾曾曾…?おばあさん?)的キャラは身体が弱そうなイメージが。
そして初代さんの奥さんはやっぱりおてんばだったのかな?という想像からこんな夢主に…。
…ともかく桃瀬様、誕生日おめでとうございます!




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あきゅろす。
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