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君と呼び合う日(ヒカリ様へ)



・神威

・学パロ
















「男の人ってさ…好きな女の子にお兄ちゃん、とかって呼ばれると嬉しいって本当?」

そんなくだらない話を唐突に始めた。主人公が神威にそう訊ねてみたのはただの好奇心だった。
女心が男にとって謎なのと同じように、男心も女にとっては理解しかねる部分が多い。
主人公が耳にした情報によると、男性は好きな女性に特殊な呼び方をされると、非常に嬉しい、興奮するとのことだった。
その代表的なのが『お兄ちゃん』という呼び方らしい。

「…さあ。」
「神威くん、私にお兄ちゃんって呼ばれたい?」
「べつに。」

神威にとっては考えたこともない発想だった。妹という存在を持ったことはないけれど、特に欲しいと思ったこともない。
『お兄ちゃん』と呼ばれることのなにが楽しいのだろうか。

「ねえ、おにいちゃん。」

主人公は冗談のつもりでそう呟いてみた。けれど、神威は数秒主人公をじっと見つめたあと、ふいっと目を反らしてしまった。
もう一度腕をひっぱりながらおにいちゃーんと主人公は呼びかけてみる。

「ねえ、ちょっと照れてるでしょ?気に入った?」
「馬鹿か。」
「嘘だ。ちょっと嬉しかったでしょ?おにいちゃん。」
「うるさい。やめろ。」
「おにいちゃん大好き。」
「普通に呼べ。」
「可愛いーほっぺた赤い。」
「遊ぶな。」

主人公が頬に触ろうとすると、神威は手を払いのけて顔をしかめた。
ごめんごめんと言いながら、主人公は神威の腰のあたりにしがみついた。
神威は少しうっとおしそうにしたが、主人公が今度はちゃんと名前を呟いたので、おとなしくこのままでいてやることにした。

「ねえ、もし私が神威くんの妹だったら、いつでもこんなふうに甘えられるのかな。」
「おまえみたいな妹はいやだ。」
「ひどっ。…まあどうひっくりかえっても妹は無理だしね。」

主人公が苦笑しながら神威の顔を見上げた。
すると急に後頭部に手がまわされ、気がつくと唇を押し付けられていた。
少し驚いて主人公は息を詰めながら神威の服の裾を握り締めた。

「…おまえが妹はいやだ。」

唇が離れると、神威は不機嫌そうにそう吐き出した。
逆に、それを聞いて主人公は機嫌良さそうに口元を緩ませた。

「私も神威くんがお兄ちゃんより、昴流くんがお兄ちゃんのほうがいいな。」
「…どういう意味だ。」
「ふむー…おにいちゃんって呼び方ではそれほど神威くんは喜ばないんだね。」
「おい。」
「じゃあ次は…ご主人様とか?」
「…。」
「これもだめ?なら神威くんが私のこと呼んでみてよ。」
「…どう呼べばいい。」
「女王様っ!とか。」
「………。」
「ちょっと、ため息つかないでよ。」


















君と呼び合う日



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あきゅろす。
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