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ずっと、君だけを見ていた(深歌様へ)


・ファイ

・学パロ






















小さいころ、いつも、いつもそばにいてくれていた。

ファイは素直で、不器用で、一生懸命。そしてすごく優しいんだ。

ずっと二人で、柔らかく、暖かい時間を過ごしていたような気がする。



























私は、中学生になってから、ファイが結構成績がいいことを知った。
私も真面目に勉強をするほうだったから、中の上くらいの成績はいつもとれていた。
けれど、ファイはいつもへらへらひょろひょろしていて、きっと全然勉強していないのにもかかわらず成績は私より上だった。
いつも順位では一桁をとっていたみたいで、私は心の隅でちょっと悔しい思いをした。



















ファイは綺麗な顔をしていた。おぼっちゃん風な品の良さそうな顔で、体も細くて、肌が白くて、私は小さい頃から彼が羨ましかった。
中学生にもなると、ファイに本気で恋をする女の子も少なくないみたいだった。
ファイは運動もそつなくこなすらしく、体育の時間に女の子達に騒がれているのを偶然見掛けた。
同じクラスではなかったから、ファイがもてていることを知って私は少し驚いた。

私がなんとなく見つめていると、ファイが一瞬私の方を見てへらっと笑った気がした。
























高校受験のとき、私は安全圏だった近所の高校を受験することにした。
ずっと一緒の学校だったファイとも、これで別れちゃうかな?と思ったけれど、ファイもそこを受験すると友達から聞いた。
私はそれが意外で、ファイに『ファイならもっと上でも余裕なんじゃない?』って聞いてみた。
でも、『地元が好きだから』とだけ言われた。

























そんなことで私は高校もファイと同じになってしまった。
同じクラスに名前があって、私はちょっと微妙な気持ちになった。
私はファイに同じクラスだねって一言伝えようとしたけど、携帯のアドレスを知らないことに気がついた。


























授業中、ファイはいつもふざけた。
先生も最初は怒ったりしていたけれど、ファイの掴みどころのない性格に丸め込まれていた。
私は授業は静かに受けたかったから、ある日ファイに静かにしてよって言ったら、次の日からファイは、私に紙くずをぶつけてくるようになった。
『怒らないで』とか『主人公は真面目だね〜』とか、くだらないことばっかり書かれていた。
でもなんだか面白くて、少しだけ笑ってしまったら、なぜかファイは、その日からもう投げてよこさなくなった。


お昼休みに、私がファイに携帯のアドレスを聞いたら、『主人公のを教えて』って言われた。
それで私のを教えたけれど、まだ一通もファイから送られてきていない。

























二年生になって、私は初めて同じクラスの男の子に告白された。
その子のことはなんとも思っていなかったけれど、『少し待ってください』と言った。
付き合ってみてもいいかもしれないと思った。




























その日の帰り道、空がオレンジ色で、なんだか青春だなあって思った。
校門近く、ファイのひょろひょろした後ろ姿が見えて、私は大声で呼びかけた。

「ファイ!!一緒に帰ろうよ!!」

ファイは、びくっとなって信じられないという顔で振り向いた。
私が走って隣に行くと少し戸惑った顔をした。
けれど、もう断ることはできないと思ったらしく、観念して一緒に歩き出した。

























「ファイ、背、伸びたね。小さい頃はちっちゃくて可愛かったのに。」
「おれは今でも可愛いよー」
「はいはい。……ねえファイ、どうしてメール送ってくれないの?」
「んー、特に用なかったから。」
「…そっか。」

私がじっと見つめるファイの横顔は、ほんのり赤い。いつもどおりの綺麗なおぼっちゃん顔でへらへら笑っていた。

「ファイ、今日私告白されちゃったよ。」
「えー?主人公を彼女にしたらおっかないよー」
「どういう意味よ」
「主人公は真面目だしー怒りんぼだしー」
「そんなに怒りっぽくないよ。」
「おれには怒るよー」
「ファイだけだよ。」

そう私が言うと、ファイはなぜか少しだけ歩調を速めた。それにならって私も少し速める。

「その子、絶対後悔するよー」
「そうかなあ。恋人、私欲しいのにー…じゃあ、断っちゃおうかな」
「そのほうがいいかもねー」

ファイはまたいつものへらへら笑いを浮かべながらそう言った。





「ねぇファイ、昔はそんなふうに笑わなかったよね。」
「そうだっけ?」
「うん、小さい頃、よく一緒に遊んでたでしょ?」
「そうだねー」
「その頃はもっと、にこって笑ったよ。」
「そうなの?」
「うん…私、そのファイの笑顔が大好きだったんだよ。いつもね、どうやったらファイに笑ってもらえるかなーって、そればっかり考えてたよ。」
「…。」
「でも、最近は見れないね。」

ファイがなんでへらへら笑うんだろう。それはずっと前から疑問だった。
でも、よく考えたら、私もそんな笑い方をする時があるような気がする。

「ファイが私にへらへら笑うときは、いつも言いたいこと言えてない時だよね。」
「…。」
「ファイ、私に言いたいことあるの?」

ファイは少し困ったような顔をした。

「……主人公、いつから気付いてた?」
「今気付いた。」
「…そっかー」

そこでファイはやっと私の方を見てくれた。
もう、笑ってはいなかった。
なんだか視線がいつもよりずっと強くて、真剣で、私はそのとき初めて、ファイはかっこいいなあ、と思った。

「主人公」
「何?」
「…おれさ、ずっと前から主人公のことが好きだった。だから付き合って欲しいな。」
「…うん。」
「おれだけのそばにいてほしい。ほかの人のものにならないで。」
「…うん、いいよ。」

ふっ、と私が顔を緩ませると、ファイも少し笑った。
私が『昔みたいだね』って言ったら、ファイは調子に乗って『結婚してくださいー』って言い出した。
馬鹿じゃないの、って私は軽く笑ったけれど、本当はどきっとしてしまった。
それから帰る途中、ファイが踊るみたいに勝手に先に進んでいくから、私は追い掛けてファイの手を繋ぎとめることにした。
そうしたら、ファイは大人しくなった。























ずっと、君だけを見ていた













「ファイ、どうして急に紙くず投げつけるのやめたの?」
「主人公が笑ったのみたら、なんだか恥ずかしくなっちゃってー」
「ふーん。」
「うんー。」
「…ファイー、本当はどうしてメールくれなかったの?」
「だって、主人公がおれのアドレス知っていて、メールくれるかもって思ったら、四六時中携帯気にしちゃうもん。」
「そっかー、じゃあ私からは送らないようにするね。」
「え…」
「嘘だよー」















あとがき
深歌様に捧げます!
ファイ夢は初めてで反応がどきどきします。

ファイはひねくれたところがあるから、好きな子にかまってもらっても、なんとなく恥ずかしがりそうという。でもかまってもらえないのもいやだから、わざと怒られるようなことしそう^^。
深歌様、これからもどうぞよろしくお願いします。




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