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short
きずとおさなご



・神威

・ちっこいヒロイン

・ちっこいのにシリアス

・東京











例によってシリアスな話をする時、周囲は静まり返る。
人はいなくなる。

「かむい」

赤い。
でもすぐに消えてなくなる。
それが体、自分の。

「いたい?」

ただ黙って首を振る。
小さな手がのびたけれど、触れる必要も触れられる必要もない。
主人公がそうしようとしたものはもうないから。
すでにもう何も残っていない皮膚に興味深げに目を見開く。

「ないぃ」

舌ったらず。
子供だからだ。

「もういたくないの?」

最初から痛くない。
人とは違うから。
けれどそれを言ったところで幼い頭を混乱させるだけ。
なら頷く。

「かむい、なんで?」

沈黙。
早くその質問には飽きるように。

「とつぜんへんい?」

よく覚えられたな。
…当たり前か。
その言葉がこの建物内で口に出されない日はない。
けれど髪くらいは撫でてやる。

「ちがう?おばけ?」

人間でも突然変異でもないもの。
だとしたら。
主人公の出した結論はそれだった。
おまえからすれば、同類かもしれない。

「どうるい」

近い。
そういうことだ。

「えぇやだ」

顔が歪む。
気に入らないらしい。
やがてぐずりはじめる。

怖いのか。
そう訊ねると首を振る。
なら、なぜ泣く。

「おばけはさわれないし、きえちゃう」
「…それはおばけじゃない」
「えぇ?」
「幻」
「まぼそり」
「…まぼろし」
「まぼろし?」
「ああ」

ならおばけとはどんなもの。
主人公はこちらを見上げる。

「普通は会わないもの」
「そうなの?かむいも?」
「さあ」
「おしえてよ」

大きくなったら。
そう諭す。
子供に使うずるい手だ。

「うぅ」

機嫌が悪くなるのも仕方ない。
だが説明したところで理解できないだろう。

「めったにあえないのかぁ」
「会えない」
「ふーんじゃあ、あえたららっきーだね」
「…?」
「らっきーは、しあわせっていみだよ」

得意げに笑う。
ここの言葉か。

「あえたらーらっきー」
「…さあ」











きずとおさなご




(幸せの形とは)


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あきゅろす。
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