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過程、恋に至るまで



・昴流

・片思いネタ

・学パロ











なんでだろう。
私は彼という人物に、最初は苦手意識すら持っていた。
類を見ない人の良さそうな彼の性格、話し方、容姿が、なんとなく気に入らなかったのかもしれない。
誰からも好かれそうな人当たりが羨ましかったのかもしれない。
むしろ、もう片方の兄弟のほうがどちらかといえば好みだった。
あくまで第一印象でだけど、目とか、あんまりしゃべらないところとか。
昴流くんとは違う魅力というか。






私の好み云々はさておき、一つ気づいたことがある。
その善良美少年昴流くんについてだ。
先ほど述べた私の思う彼のイメージ、評価、好感度の値がはっきり私の中で確立した理由。
ほかでもない、その昴流くんと私は最近頻繁に会話をしているような気がする。
話の内容は特に説明するほど大したものじゃない。
友人、知人たちと交わす他愛ないおしゃべりというやつだった。
して、なぜ友人でもなく、知人と言えるか言えないかのレベルである彼と私がそんなことをしているのかというと、至極簡単。
彼が話しかけてくるのだ。
主人公さん宿題やった?とか(同級生にさんってなんだよと思うが)
気さくな彼のことだから、たまたま近くにいた私に話しかけてきただけなんだろうかと思ったけれど、どうやらそうではなさそうだった。
昴流くんは意図的に私に話しかけているらしかった。
意図的に私に話しかけて、意図的に私の掃除当番を手伝って、意図的に放課後一緒に帰ろうと誘っているらしかった。
つまり、彼はどちらかといえば私に好感を持っているようだった。
そう思われる心当たりはなかったように感じるけれど、とりあえず昴流くんは私と仲良くなろうとしてくれているのが分かった。






これは一週間ほど前のできごとである。
彼は何を思ったか私に向かって、主人公さん今日も可愛いね、と発言してきた。
朝、出会い頭に。
罰ゲームでもやらされているのかと思うくらいのその言葉に、私は至極そっけなく接してやった。
そのほうが昴流くんに君が発した台詞は、私に言うべきでなかったと分からせることが出来ると思ったから。
想像通りというか何というか、その後昴流くんは大いに慌ててくれた。
褒めたかったとかなんとか言っていた。
きっと誰かに助言ないし入れ知恵でもされたのだろう。
彼は私にも自分に好感を持ってほしいと思っているらしかった。
つまり、彼は私のことが好きらしいということが分かった。






さて、これはつい先日のことになる。
私は彼に告白なるものをされた。
好きです、付き合ってください。
そう言われた。
結論、嬉しかった。
昴流くんにそう言われて嬉しかった。
いいよって言っちゃうくらい嬉しかった。

…現在、私は学校にいる。
放送により使い古しの音楽が流れ、ぞろぞろと教室から生徒たちが溢れ始める。
放課後と呼ばれる時間に差し掛かっているところだ。

「主人公、帰ろう」

呼び捨てにしてくれと、私はお願いした。
その呼び方の変化により、私たちの関係も変化したことが周りの人にもそれとなく分かったらしい。
昴流くんの分かりやすい態度は、前々から周知だったと思うけれど。

私は昴流くんの呼びかけに応じると、自分の席を立った。
鞄を手に取りながら、帰りに何か食べようか、なんて提案する。
昴流くんは素直に頷いた。
ちょっとお腹すいた、なんて言いながら。

廊下に出ると、なんとも偶然。
ちょうど彼の片割れが私の目の前を通過しようとしていた。
私は思わず反射的に声をかけてしまった。

「あ、神威くん、今帰りなの?」

ゆっくり神威くんは立ち止まり、声の主が私だと判別し、すぐそばにいる昴流くんを確認するや、黙って頷いた。
今のところ私と神威くんとの会話回数は片手で数えられる程度だった。

「これから昴流くんと何か食べに行くんだけれど、神威くんも一緒に行こうよ」

昴流くんはちょっと、ほんのちょっとだけ、えって顔をした。
私はわざと気付かないふりをする。
しかし私より長年一緒にいる神威くんがそれを読み取れないはずもないのか、彼は行かないと短く答えた。

「神威くん財布事情?アイスくらいなら私奢るよ。神威くんと話してみたいし」
「え…」

こんどは確実に昴流くんが感情を口にだしたので、私は内心吹き出した。
少し意地悪だっただろうか。

「主人公、神威と仲良かったの?」
「ん?話したのは二回くらいかな。この前昴流くんのお家に遊びに行った日に、おじゃました時と帰る時に挨拶した」

つまり、今日で三回目。
実質これまで話したことはなかったということだ。

「神威くんとしゃべってみたかったから。だめかな」
「…べつに」
「よし、なら行こう!」
「主人公、もしかして神威のこと」
「私は昔から神威くんのファンです」
「ええっ!?」
「…冗談だって、そんな顔しないで。ちゃんと昴流くんが一番好きだよ」

そう言って昴流くんの頭を撫でてあげると、昴流くんは困ったような、不満そうな顔をした。
あの優しい昴流くんが私に対してこんな顔をすることが、すごく意外で、好きだった。
アイスクリーム屋さんについたなら、昴流くんの分も奢ってあげようと思う。
そして私が自分の分として頼むであろう好物の苺アイスも、少しだけ彼に譲渡しよう。



そうしたら、きっと彼の機嫌も直るだろうか?











過程、恋に至るまで




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