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答え――それは、この国の神子になるかどうかということ。婚約者候補の存在を受け入れられるかということ。


熱か下がってから、考える時間はたくさんあった。


一生懸命考えた。


こればかりは自分で答えを出さなければいけないから、誰にも相談をしないで、ちゃんと自分自身で考えた。





一番先に考えたのは村の人たちのこと。


自分を本当の子供のように愛してくれた優しい人たち。この国の神子になれば簡単にはもう会えない。自分以外は高齢の者しかいない村のことが気がかりだった。


でも、東の国はそんな村を支援してくれると約束してくれた。東の国の傘下に入るというわけではない。無条件で支援してくれるというのだ。望む者がいれば東の国の移住も認め、そのままの村での暮らしも保証してくれる。


しかもそれは、ユキが神子を引き受けなくても約束してくれるというのだ。それがどれほどユキを安心させたことだろう。


だからユキは、村のことなしで純粋に東の国のことだけ考えた。


この国のこと、城の人たちのこと、城下の人たちのこと、そしてまだ知らぬ婚約者候補たちのことを――。


「……答え、ちゃんと伝えます」

「わかった。時間になったらミーナが迎えに行く。二人で謁見の間に来い」


こくりとユキは頷く。





あれ?


迎えは、ミーナなんだ?


カイルさんや、ティーダがいるのに?





疑問に思って、二人を見る。


「後から行くから、そんな顔しなくても大丈夫だ」


カイルが苦笑いをしながら答えてくれる。


そんな変な顔してたかのかな。







さらり





「――じゃあな」


ラビスの声がして、毛先を撫でられたのだと気付いて振り向いたが、ラビスは既に背中を向けて帰っていってしまっていた。


ラビスは来るときも突然だが、帰るときもそうだ。


「あいつも相変わらずだな」

「我が道をってやつっスね」


二人のそんな会話を背に、ユキはしばらく、小さくなっていくラビスの姿を見続けていた。



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あきゅろす。
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