2 答え――それは、この国の神子になるかどうかということ。婚約者候補の存在を受け入れられるかということ。 熱か下がってから、考える時間はたくさんあった。 一生懸命考えた。 こればかりは自分で答えを出さなければいけないから、誰にも相談をしないで、ちゃんと自分自身で考えた。 一番先に考えたのは村の人たちのこと。 自分を本当の子供のように愛してくれた優しい人たち。この国の神子になれば簡単にはもう会えない。自分以外は高齢の者しかいない村のことが気がかりだった。 でも、東の国はそんな村を支援してくれると約束してくれた。東の国の傘下に入るというわけではない。無条件で支援してくれるというのだ。望む者がいれば東の国の移住も認め、そのままの村での暮らしも保証してくれる。 しかもそれは、ユキが神子を引き受けなくても約束してくれるというのだ。それがどれほどユキを安心させたことだろう。 だからユキは、村のことなしで純粋に東の国のことだけ考えた。 この国のこと、城の人たちのこと、城下の人たちのこと、そしてまだ知らぬ婚約者候補たちのことを――。 「……答え、ちゃんと伝えます」 「わかった。時間になったらミーナが迎えに行く。二人で謁見の間に来い」 こくりとユキは頷く。 あれ? 迎えは、ミーナなんだ? カイルさんや、ティーダがいるのに? 疑問に思って、二人を見る。 「後から行くから、そんな顔しなくても大丈夫だ」 カイルが苦笑いをしながら答えてくれる。 そんな変な顔してたかのかな。 さらり 「――じゃあな」 ラビスの声がして、毛先を撫でられたのだと気付いて振り向いたが、ラビスは既に背中を向けて帰っていってしまっていた。 ラビスは来るときも突然だが、帰るときもそうだ。 「あいつも相変わらずだな」 「我が道をってやつっスね」 二人のそんな会話を背に、ユキはしばらく、小さくなっていくラビスの姿を見続けていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |