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「今日は……黄色です」


あれから1週間たった。


熱を出してしまった僕は丸2日、夢と現実をゆらゆらしていた。


目を開けると、いつも誰かがそばにいてくれた。それは、毎回違ったけど、でもいつでもみんな安心させようと温かい笑顔を向けてくれていたと――思う。曖昧な記憶で申し訳ない気持ちになる。


だから、熱が下がってからは皆の顔をしっかり見て感謝の言葉を伝えた。


始めに伝えた「ごめんなさい」より、「ありがとう」をみんなは喜んでくれた。


今回の熱は、風邪が原因みたい。それに加えて、今までの疲れとストレスも重なったんだろうってヨルンさんに言われた。皆に良くしてもらっていたから、正直、疲れとかストレスとか、自分ではよくわからなかったけど――。





今日は久しぶりに朝の散歩に来ていた。


体調も良くなってヨルンさんの許可ももらったし、それに目を覚ました時には北の国の人たちはもういなくて、城は今まで通りの落ち着いた温かい雰囲気に戻っていたから、部屋から出ることもすぐに許可された。


今日も隣にはカイルとティーダがいてくれていた。


でも、いつもと違うことも、ここ最近増えた。


それが――


「……おはよう、ございます。ラビスさん」

「ああ」


ラビスがユキの元を訪れることが増えたこと。


部屋で休んでいる間も毎日顔を見せてくれていた。今まで会話という会話もなかった関係からすれば、あまりの違いに正直ユキは戸惑った。それは、周りも同じだったみたいで皆、ラビスが部屋に見舞いに訪れた時はビックリした顔を隠せなかった。しかも、それは毎日続いたのだ。


相変わらず会話は少ない。


ユキの顔だけを見て、満足げに帰っていく時も多々あった。


初めは戸惑っていたけど、それでも自分を心配してくれているのであろうことは伝わってきて、ユキはラビスの訪問を密かに楽しみにしていた。


久しぶりに訪れた朝の散歩なので、ここでラビスに会うのはもちろん初めてだ。


「お前は、この花が好きなのか?」

「……はい」

「そうか」

「毎日、違う色……それに小さくて、とてもかわいいです」


今日は黄色。


色の変化には特に統一性はないようで、どの色が咲くのは朝になってみないと誰にもわからない。だからこそ、今日は何色だろうかと見に来ることがユキは楽しくて仕方なかった。


黄色の花びらを、壊さないように優しく触れていたユキの頭を、同じようにラビスは壊れ物を扱うように触れる。


その不器用な触り方にユキはラビスを見つめる。


「今日、謁見の間でお前の答えを聞かせてほしい」




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