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短編
生徒会長と風紀委員長
旧校舎の光が入らない暗い教室は落ち着く。
いつもいる生徒会室とは正反対の部屋で一人煙草を吸いながら、さっきの風紀委員長の顔を思い浮かべた。
あれは絶対気付いてる。気付かないわけがない。
意図的にあいつと同じ銘柄の煙草にして、意図的に目の前を通ったから。
友達には悪いことしたな、外見が不良だから疑われてるだろう。


「会長、失礼します」


深く煙草の煙を吐き出したとき、親衛隊の一人が扉の外から声をかけた。
俺が起きてることは知ってるからそのまま話し出す。ここら辺は友達より楽。


「風紀委員長が、こちらに向かっているそうです」

「……はや」


流石というか何と言うか、早すぎる。
もう少し悪いことして逃げてる子供の気分を味わっていたかったな。
二本目の煙草に手を伸ばしたとき、扉が開いた。


「おはよー暇人」

「暇じゃねえよ馬鹿」


そう?と笑ってみせると、明らかに不機嫌な顔になった。おもしろい。
でも一番好きな顔は違う。
もしかしたら俺といるときはしてくれないかもしれないな。


「なにしにきたの?」

「壁を壊しに」


なんのことか分からなくて首をかしげる。
扉なら壊れてはいないけど違うだろうな。
にやっと嫌な笑みを浮かべている風紀委員長は本当に悪人みたいだ。
絶対誤解されそうな怖い顔してるから怖がられるんだと思うけど言ったら怒られそう。


「つまりどういうこと?」

「職務質問しにきたんだけどいらなかったな」

「ちょっとー質問に答えてよ」


職務質問は煙草を吸っていること、ここにいるのが分かったのは実は親衛隊とつながっていること、それなら分かる。
ただ唯一壁の意味が分からない。


「親衛隊も入れないところに入ろうと思ってな」

「……つまり?」


思わず声が震えた。
心臓がどくどくと音を立ててうるさい。静かにしてほしい。
これから俺がほしかった言葉を聞けるかもしれないんだから。
一言も聞き逃さないように、でも顔には出さずに目の前にいる男を見つめる。はやく言わないかな。
そう思ってふと気付く。
俺が先に言えばいいだけだ。


「……好きだ」


独り言のように呟いた言葉は二人分の響きで部屋に広がった。俺だけじゃないなにかが同じことを言った。



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