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短編
Happy new year−sweet holiday−
長いようで短かった冬休みが終わった。
年が明けて入った教室は、君がいないだけで止まって見えた。


教室の扉が開き、俺の時間が動き出した。
眠そうに入ってきて、俺を見て目だけで笑う男に手を振る。
少し寝癖がついている髪も、鞄の持ち方も、なにも変わっていない。

だが少しだけ、違う気がした。


「ねえ、今日午前中で終わりだから行っていい?」

「……いいけど」


時間が許す限り話して、ふと違和感の正体に気付いた。
身体はこっちを向いているのに、目が合わない。
少なくとも冬休み中会ったときは普通だった。
合わせることは少なくても、一瞬だけ気が緩んだときに。

自分がなにかしたかと不安になった瞬間、前を向いているべき時間にこっちを向いた。
それは一瞬手が伸びてきただけだったが、俺の机に小さな紙を置いていった。

かさりと音を立てるそれに理由が書いてある気がして、担任の話も聞かずに折り畳まれた紙を開く。
お前が悪いという悪態にもとれる言葉だけで、違和感を全て理解した。


「…ごめんなさい」

「……腰いたいし」

「ごめん…」

「笑ってんの分かるんだけど」


不安になった自分が馬鹿らしくなるような、単純で可愛い理由で思わず笑いが込み上げる。

昨日行為はしなかったものの、首の際どいところに跡をつけてしまった。
それがいつバレるか分からない恥ずかしさが裏返って軽く怒っていたらしい。
こういう一面を見るたびに好きになっていく。


そしてまた俺たちは大人になる新しい一年を迎えた。



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あきゅろす。
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