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短編
Stockholm syndrome
君はボクが帰ると、なにもせずに待てと言う。
ボクは言う通りに座って君を待つ。
君が帰ってきて、ボクの身体に異常がないか確かめて、そうしてやっとボクは自由になる。


自由になったと言っても、外に出ることは許されない。
友達に呼ばれても出ていくことはできないし、君が帰ってくる前には家にいなければいけないから、遊ぶ時間も限られている。



家のなかにはボクと君しかいない。
両親はいない。ペットもいない。



二人きりのこの空間で、君はボクをとても大切そうに、愛しそうに抱く。
最初、抱くは抱きしめるのほうの抱くだった。
いつからか身体に触れられ、少しずつそういう行為になっていった。


ボクはそれを知ってて、君を許した。
君が泣いていたのを知っているから。



君はボクを抱きしめながら他の人を想っている。
その人とどういう関係なのかは知らないけど、
泣いている。


ボクはただその人に似てるだけかもしれない。
違うと分かったら捨てられるかもしれない。

それでも、今寂しさで君が泣いていると思うと、
君の家に行く足を止められない。



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あきゅろす。
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