蒼空の糸
3
やっと手に戻ってきた携帯には、いくつかのラインが入っていた。慎矢はなにも言ってなかったから気付かなかった。きてたならきてるって言ってくれてもいいのに。
それは俺が最近よく遊んでる先輩からで、今日のお昼ごはんのお誘いだった。
「んんー」
「どうした唸って、腹いてえの」
「いや違うけど。先輩からお昼誘われてたわー」
「は、行くの」
行くなんて言ってないのに目の色を変えて、腕まで掴まれた。最近こういうこと多いなあ、なにも考えてないんだろうけどたちが悪い。いま彼女がいないから、振られたから友達にはいてほしいだけ。
そんなことを考えてたらその無言の時間を肯定と受け取ってしまったらしい。何も言わない俺の腕を離して、慎矢のほうを向いてしまった。さっきまで喧嘩してたのに。
「待って、待って啓ちゃん行かないよ」
「当たり前ー!行ったら飯奢らす」
振り向いた啓ちゃんは意外に笑顔で、行かないことをわかっててからかってたんだとやっと気付いた。俺はまた鈍さで余計な勘違いをして、また無駄に傷ついていく。
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