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蒼空の糸
2
退屈な先生の話と式が始まった。
毎回式のたびに同じことを喋るから、もう聞き飽きているのは俺だけじゃないらしい。隣にいる啓ちゃんの首がたまに動いてるのはたぶん寝てるんだろう。
さっきから担任の視線が痛いのに見て見ぬ振りをして、それでも寝る体制でいる啓ちゃんはほんとに自由でマイペース。
俺は話を聞く振りをして、啓ちゃんの頭が上下に動くのを見ることしかできないんだけど。
切り忘れたチャイムが鳴った。先生は構わず就職について話し続けている。

そして俺たちは、なにも変わらないまま二年生になった。



「飯いくぞ晴ー」

「はいはい」


機嫌が直ったらしい啓ちゃんは、さっきとは裏腹にはやくはやくと急かしてくる。さっき集会に行きたくないと言ってた人じゃないみたいだ。
そんな中慎矢は啓ちゃんに急かされるのも構わずやっぱりゲームをして、また啓ちゃんの機嫌が少し悪くなった。たぶんそれが俺の携帯ということは忘れてるんだろう。あとでまた俺の携帯が悪いとか、よくわからない文句を言われる気がする。


「あれ、そういえば啓ちゃん彼女は、」

「お前それ聞く?聞いちゃう?そんな人の恋愛聞いてなにが楽しい?」

「振られたんだよな」

「うっせえよ慎矢!黙ってゲームやってろ!」


どうやら啓ちゃんの地雷を踏んでしまったらしい。
最近ラインの画像が変わったりしたのはそのせいか、と心の中で納得する。あんなにラブラブに見えたのによくわかんないな。
俺が話題を振ってしまったせいで慎矢は啓ちゃんをからかう気満載な顔でにやにやしていた。こういう人の弱みみたいなのが好きだから、一回スイッチが入ってしまうと慎矢が飽きるまでからかわれ続ける。今聞いたのは失敗だったな。
でも啓ちゃんの彼女関係が気になるのは本当。俺よりはるかに多い関係を持っているからか、振られても次、また次と女の子が寄っている。だから俺は今啓ちゃんが友情が大切か、恋愛が大切か見極めなければいけない。


「あー!もううっせーよほんと!今は誰とも付き合う気ねえっての」

「え、それほんと」

「なんで晴が驚いてんの」

「だってさ、この前女子と話してたじゃん!廊下で、放課後」


てっきり次はあの子かと思ってた。女の子の方はたぶん告白されたら付き合うし告白すると思う。
俺でも分かるくらいに分かりやすくて、前の彼女が誤解してもおかしくないほどだった。啓ちゃんも満更でもない顔してたのに、付き合わないことが意外すぎる。


「あーあれな、なんか、あれはいいわ」


本当にどうでもよさそうに言い放った啓ちゃんは、いつもの女の子について話す時の態度じゃなかった。付き合う気も、好きになる気もないって顔をしている。
あれなんて言ったことない。必ず名前で呼ぶのに。


「なんかなー、好き好きオーラっていうの?彼女いてもかまいません!って感じがすごくてだめ。オレ的にはもうちょいクールで、でもオレだけっていうのがいい。想われるだけじゃやだ」

「わっかんねー。啓ちゃんの恋愛観ほんと謎」


想われてるのは嬉しいことじゃないのか。最近の啓ちゃんは難しい。
啓ちゃんは告白されるのに女の子に飽きられて振られる。その度に次の子に愛されて、でもまた振られての繰り返し。
それを思いだしたのか、さっきの仕返しとばかりに慎矢の背中を殴っている。それにはさすがにイラついたのか、やっと携帯が俺の元に帰ってきた。ほんとこの二人は、仲いいのか悪いのかわかんない。


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