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三人の幼馴染み2
「またか…」

「またですか…」


一旦家に帰り、約束通り悠の家に行くと既に来ていた義幸と悠が難しい顔をしていた。


「どうしたの…?」


声をかけると、悠が泣きそうな顔で抱きついてきた。


「尚…ゆきちゃんどうにかして…!」

「え?」

「…義幸王様になりすぎ。もう三回目だし」


説明どころではない悠に変わり、望が説明してくれた。
どうやら王様ゲームをしていたらしい。
引く度に義幸が王様になるのは尚にはどうにもできないことなので、首を横に振る。


「運よくないし…」

「義幸の呪いは尚が近くにいれば解ける。」

「えっ、え?!」


ぐいと腕を引かれ、悠の膝の上に座らされた。
内心おかしいと思いながらも、悠の腕に拘束されているので離れられない。


「尚もやるー?」


満足そうに尚の頭を撫でながら、数字が書いてある割り箸を差し出す。

適当に一番奥にあった割り箸を抜き取るとそれに
数字はなく、先端には赤い印が付いていた。


「…尚、王様。」

「まじで……?ゆきちゃんの呪縛をこんな簡単に…!」

「呪縛って何だ…」


信じられないものを見るように尚をみつめる悠には聞こえていない様だった。
望が悠の手から引き、自分の番号を確認してから尚の方を向いた。


「……で、王様?命令してよ」

「えっ…と、どうしよう…」


当たるとは思ってなく、何も考えていなかったのでとりあえず適当な数字を言うと、当たったのは悠だった。
何故か嬉しそうな悠は尚を抱き締めていた腕の力を強め、笑顔を見せた。


「命令はなーに?」

「……苦しいから…離して…?」

「…………王様の仰せのままに…」


長い沈黙のあと呟いて、渋々腕の拘束を解く。
自由になった尚は真っ直ぐに義幸の元へ向かい、顔を覗き込んだ。


「……どうした?」


優しく微笑まれると、何を言ったらいいか分からなくなる。
義幸が不機嫌のような気がして来てみたのだが、
どうやらそれは杞憂に終わったらしい。
そんな尚の気持ちを知ってか、義幸は何も言わずに緩く両腕を上げた。


「…おいで」


柔らかく微笑まれ、無意識のうちに手を伸ばす。
これは昔からの癖のようなもので、手を差し出されると迷わずにその手を取ってしまう。
そのまま義幸の鼓動を聞くように、胸に耳を当てるのが好きだ。

頬を擦り寄せると優しく頭を撫でられ、少し強く抱きしめられる。


「……望くん、どうしましょう」

「…あのオーラは直視できない」

「ですよねー…」


完全に悠と望を忘れている二人に背を向ける。
義幸は満足するまで尚を離さないので、終わるまで別のことをしていた方がいいと判断したのだ。

悠が義幸と同じ動作で腕を上げた。
望が不思議そうにそれを目で追っていると、悠が優しく微笑む。


「望、おいで」


その言葉に動揺した様子もなく、望はただ首を傾げる。


「俺たちもいちゃらぶしよー」

「やだ」

「即答?!」


流石に即答されたのはショックだったのか、腕を下げ項垂れる。
そして悠から目を離し、未だに尚を離さない義幸を緩く睨む。
睨むと言ってもそれは学校の人が見ても分からない位の表情の動きで表現される。
分かる人といえばこの空間にいる幼馴染みたちだけだろう。

異常なほど尚を溺愛している義幸と、それを普通に受け入れている尚、そんな二人の様子を無表情に見える顔で眺めている望と項垂れている悠という、不思議な構図と関係がこの四人の日常だ。




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