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Spring Start
笑顔の裏1
新入生恒例の自己紹介と簡単な説明が終わり、
ホームルームも終わると、新入生たちは朝より
穏やかな顔で学校を出て帰っていく。

だが尚のクラス、1年2組は、クラスの大半が帰らずに固まっていた。


「…尚、迎えにきた」

「あ、椀ちゃん!」

「……それ犬っぽいよね」


先日の入学式の学年首席挨拶で、2年生代表の望が目の前にいて今日入学したばかりの尚と仲が良さそうに話している。
それだけでも生徒たちを困惑させるには充分だった。


「尚くーん!」

「っわ、悠ちゃん…!」

「会いたかったよー!」


そこに既に数人の生徒が噂に聞いていた悠まで来て、しかも抱きついたのだから更に混乱が膨れ上がった。

何も知らなかった生徒たちも一部の人に説明されている。
望と悠と仲が良い新入生がいるという新しい噂は、明日から学校中に広がるだろう。


「ゆっきー生徒会の仕事あるってー」

「……先に帰ってろって言ってた」

「そっか……あ、待って荷物…」


机の上に置いてある鞄を取り、教室を出ていく三人を信じられない顔で見る生徒たちから次々に声が上がる。
それは格好いいや綺麗、という悠と望に対する
言葉が多いが、その中に混ざって尚は何者だという疑問が浮かんでいた。






「…明日言っておかなくちゃねー」


悠が望を覗き込み、望も分かっているのか僅かに頷いた。
話の内容が分からない尚は不思議そうな顔をしていたが、雰囲気を感じ取ったのか聞くことはしなかった。


「悠ちゃん、盆ちゃんいつ帰ってくる?」

「んー…尚が夕飯食べるくらいかな…」

「遅いね…」


寂しそうに俯いてしまった尚の頭に、望の手が置かれる。


「……夜、行ってあげたら?」

「望…?」

「そっか、夜行けば会えるよね!」


途端にぱっと笑顔になる尚に、望は幼馴染み達にしか分からない笑顔を浮かべている。

二人が笑顔で話している中、悠だけが望を怪訝そうに見つめていた。




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