初恋迷路
2
少し前から、終が泊まりに来ることが多くなった。理由は家に親がいないからとか、ゲームをやりたいからとか言ってるけど、本当は俺が家で一人でいるからだと思う。親がいないのなんて常だし、寂しさも慣れてしまったものだから感じていないのは知っているはずなのに。
今日も泊まりに来た終は、慣れた手付きで冷蔵庫を開けて笑った。
「ふは、水だらけ」
「紅茶もある」
「茶葉かよ!」
茶葉だろうが夜には紅茶を飲まないことは知ってるから、俺は黙って夕飯の支度を始めた。
最初は家にいない親のために始めた家事も、今では終のためにしかしていない。
料理も実はできるはずなのにしたがらない終に言われてし始めた。自分一人だったら作る気も食べる気もあまり起きないからちょうどいいのかもしれない。
「何食べたい?」
「間宮家特製ビーフシチュー」
「無理!それは終が作ってよ」
隣に立つ終に持っていたエプロンを手渡しながら言うと、眉を寄せながら笑った。
それは仕方ないな、という肯定の表情で、手を洗い出した終に任せてリビングへ向かう。終が俺の家のキッチンに立っていることが久しぶりでなんとなく嬉しくて、ずっと料理をしてる後ろ姿を眺めていた。
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