06
抱きついてきた妹をきちんと抱きとめて、アキラは穏やかに微笑んだ。
小さく震えるイーヴリンの頭を撫でながら、安心させるように口を開く。
「もう、大丈夫だよ。一人にさせてしまってごめんね、リン。」
「私こそ、勝手にいなくなってしまって申し訳ありませんでした。」
フルフルと頭を振りながら、イーヴリンが謝罪する。
そんな妹を抱きしめる力を強めて、アキラはようやく肩の力を抜いた。
しばらくして、アキラはイーヴリンの体をやんわり押して自分から離れるように促す。
抵抗することなくアキラから離れたイーヴリンは、恥ずかしそうに頬を染めて
少し離れた所で再開を喜んでいる二人の方へと顔を向けた。
「ユーリ。守ってくれてありがとうございました。」
スカートの裾を軽く握り、お辞儀をしてふんわりと微笑む。
その行為に、顔を赤く染めた有利ははっとしたように笑みを浮かべた。
「俺は何もできなかったから、お礼なんていいよ!!」
「私のことを後ろにかばってくれたじゃないですか。とても心強かったですよ。」
「そっか。それなら、よかったや。」
初々しい二人を眺めながら、アキラは有利の隣に立つ青年のもとへと足を向ける。
ゆったりとした動きで、近づいてくるアキラに気付いたのか、青年が爽やかな笑みを浮かべた。
「先ほどは、ありがとうございました。おかげさまで、妹と合流することができました。」
「こちらこそ。俺も探し人と再会できたので。」
「まさか、一緒にいるとは思いませんでしたけどね。」
苦笑しながら、未だ話を続けている二人へと視線を向ける。
それにつられるようにして、青年もそちらへと視線を向けた。
まるで、子供を見るかのような二人の視線に気づいたのか、和やかな雰囲気を出していた有利とイーヴリンが振り返る。
「そういえばさ、コンラッドとえーと・・・。」
知らない顔に、有利の言葉が止まる。
それに気付いたのか、アキラが穏やかに微笑んで口を開いた。
「はじめまして。イーヴリンの義兄のアキラ・リンチェと申します。」
「こ、こちらこそ、初めまして。俺、渋谷有利っていいます。」
(イーヴリンはあんまり似てないって言ってたけど、笑った顔とかそっくりじゃん)
なんてことを心の中で思いながら、有利が慌てて名前を名乗る。
「妹を助けてくれてありがとうございます、渋谷君。」
感謝の言葉を口にするアキラに、有利は多少の違和感を覚えた。
しかし、それは一瞬のことでアキラに言葉を返すべく口を開く。
「俺はたいしたことしてないですから・・・。」
「それでも、あなたがいなかったらリンはきっと怖かったと思いますから。
・・・本当にありがとう」
「怖かった」の所で、苦渋に顔をしかめるアキラは彼女のことをとても大事にしているのだろう。
しんみりとした空気を壊すように、有利が先ほどから気になっていたことを口にした。
「そういえば、アキラさんとコンラッドは知り合いなのか?」
有利とイーヴリンのピンチにさっそうと現れた二人の保護者。
一緒に現れた二人に、多少の疑問があって有利がそう尋ねる。
それは、イーヴリンも一緒なのか、不思議そうな表情で、背の高い二人を見上げていた。
「彼とは、さっき町で出会ったのですよ。人を探しているみたいでしたので、一緒に探したほうが効率がいいと思いまして、ともに行動していたんです」
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