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02



「どうした、リン?」


唇を尖らせこちらを見ている妹の頭をやさしくなでながら、そう言うアキラ。


アキラの問いかけに、イーヴリンがゆっくりと口を開いた。


「お兄様とセルゲイだけ楽しそうで、なんだかずるいですわ。」


普段めったにそういう我儘を言わないイーヴリンにキョトンとするアキラと、ニヤニヤとした笑みを浮かべ小さな主を見るセルゲイ。


「…リン。ごめんな、寂しい思いをさせて」


そう言ってやさしい笑みを浮かべるアキラに、はっとして恥ずかしそうに頬を染め上げた。


「そ、それよりお兄様!!
先ほど、旅行に行くとおっしゃっておりましたがどちらに行く予定なのですか?」


あわてた様子で話題を変えるイーヴリン。


その様子を見ながら、アキラは懐から長方形の紙を取り出すと、期待に満ちた目でこちらを見ている妹と、隣で不思議そうにことらを見ている優秀な執事に渡した。


「しんまこく?」


長方形の紙、もといチケットに書かれた文字を呼びあげたイーヴリンは、聞きなれない国名に首をかしげた。


「眞魔国。ストラナー大陸より南側にある大きな国だよ。」


「ストラナー大陸を出るのですか!?」


大きく目を見開いてそう問いかけるイーヴリンに頷くアキラ。


「うん。この大陸じゃぁ、顔見知りが多すぎてゆっくりできないだろ?
ちょうど、今回の任務先でチケットをもらったことだし、一緒に行こう」


ちょっと困ったように微笑みながら、そう言うアキラに、イーヴリンは嬉しそうに笑った。


隣にいるセルゲイはアキラの真意がわかったのか苦笑している。


「明後日にはここをたとうと思っているから、それまでに仕事終わらせておいで」


「はい!!」


力強く頷いて屋敷のほうへとかけていくイーヴリンの姿を見ながら、セルゲイが口を開いた。


「それにしても、よく陛下が許可したな。」


「この三年間、まともに休暇を取ってなかったからね。そう言ったら、陛下も渋々といった様子で許可してくれたよ」


苦笑しながら屋敷へと歩を進めるアキラの後ろを歩きながら、セルゲイが再び口を開く。


「それで、大陸外か?」


「ああ。今回は、仕事のことなんか忘れてゆっくりしたい。
もちろんお前もだぞ、セルゲイ。」


「了解しました、坊っちゃん」


そう言って笑った若き主に、セルゲイは頭を下げるのだった。




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