朝練05
「部長、5秒1ですね。」
「Ya-Ha-!自己ベスト!!
片手をあげて喜んどる部長。
よっぽどうれしかったらしい。
「さて、最後は・・・」
ギュイっとセナの方を見る。
それに、ビクッと反応しながらセナは後ずさった。
「ぼ、僕はちょっと・・・。」
「なに?走りたくて仕方ない?」
あ、セナが脅されとる。
部長の脅しに負けて、ノロノロとスタート地点へと向かうセナの後ろ姿を眺めながら、期待の眼差しでセナを見る部長に声をかけた。
「部長、なーんでセナに選手やれなんて言ったんですか?」
「あ?あいつには、スピードがあんだよ。まぁ、見てればわかる。」
うちのその問いかけに、部長はこちらをチラリとみて答える。
昨日、揃えたセナのデータには飛びぬけとる成績はなったような気がしたんやけどな。
なんて思っとると、またもや隣から爆音が聞こえてきよった。
反射的に指を動かしタイマーを起動させ、今までと同じように目の前にきたとこで止める。
「5秒ジャスト、やね。」
手の中にあるストップウォッチに書かれた数字を読み上げた。
部長は、なんや納得してへんような顔してパソコン起動させとるけど、普通やったら十分早いと思われる記録に、セナは驚いとるようや。
「小早川瀬那、中学時代の体力測定は反復横飛びだけ学年1位か。」
いきなり言われて自分の情報に、抗議しとるセナを無視して、部長がどっからか袋を取り出した。
「走りで鍛えた瞬発力だな・・・それであのロケットスタートか。
でも、すぐスピードを緩めるから徒競争だと記録が出ない。」
その袋からでてきよったのは、なんかの骨。
見た目、犬の餌らしきその骨を未だ慌てとるセナの背中に入れると、部長が思いっきり叫んだ。
「ケルベロス!!!!」
ケルベロス・・・。
この人、本間に地獄の門番でも紹介する気か。
と、内心ワクワクしながら現れたんは、一匹の犬やった。
首には、ぎょうさんトゲのついた首輪をしとって、鋭い歯を覗かしとる見るからに凶暴そうな犬。
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