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申しわけないと思いつつも、今してあげられることは浮かばなかった。

ただ、少しでも早く楽にしてあげること。

それが今できる、精一杯だ。

軽い振動を響かせ"化け物"が倒れた。

「フォシテルさま!やはりあの小僧エクスフィアを装備しています!それにあの小娘もです!」

「……やはり我々が探していたエンジェルス計画のものかっ!それをよこせ!」

「ん……渡す必要が感じられないです」

それはもう、挑発するようにニヤリと笑って言った。

その反対にロイドは感情をあらわにする。

「いやだ!これはおまえらに殺された母さんの形見だ!」

「何を言うか!おまえの母は……」

最後まで言われる前。

"化け物"が起き上がりフォシテスをを羽交い絞めにする。

『逃げな……さい……ジーニアス、ロイド、お嬢さん……』

電子音のような、くぐもった音のような、はっきりとしない声だ。

「な、何、今の声……。ま……まさかマーブルさん……?」

「……そんなバカな!」

『ゥ……ウゥ……グウゥ……離れて……早く……っ!』

彼女が選択したのは、自爆だったはずだ。

『ジーニアス……新しい孫ができたみたいで嬉しかったわ。さようなら……』

その体が光り出す。

記憶に違いはない。

動かないジーニアスの前にリセリアは立つ。

爆発はこちらにもダメージを与えるが、今まで受けてきた痛みに比べれば大した痛みではない。

爆風から目を守った右手に火傷を負ったくらいだ。

皮膚が焼け、血が滲む。

そして、ジーニアスの足元にエクスフィアが転がってきた。

彼女の肉体は……跡形もない。

「……くっ」

直撃をくらってさすがに無事ではない様子。

ここで、始末する。

そう彼に剣を向けようとした。

が、それを見ていたようで、

「……まずい。フォシテスさまをお助けしろ」

下っ端たちが囲むようにフォシテスを守る。

「……ロイドよ。その左腕のエクスフィアがある限りおまえは我々にねらわれる……覚えておけ!そこの小娘もだ!」

部下に庇われながら、そう言い残して去った。

「マ、マーブルさん……!マーブルさんっ!!うわぁぁぁぁぁ!」

エクスフィアを握り締め、ジーニアスは慟哭した。





「大変なことをしてくれたな。見ろ!この村の参上を!……おまえのせいだ」

燃え盛る家。

地面に横たわる死体。

「ごめん……なさい」

ロイドからはそんな謝罪の言葉しか出てこない。

「あやまってすむ問題じゃない。奴らはおまえを敵を認定した。お前がいる限りこの村の平和はないのだ……わかるな?」

ああ、こんなに胸糞悪い場所にいたのだ。

人の汚さを……それを知ったのはこの場所だ。

そう、育った場所で見てきた。

「ちょっと待ってよ!それってロイドを追い出すってこと!?」

庇うようにジーニアスがロイドの前に出る。

「そうだ」

「そんな!ロイドは悪くない。ただマーブルさんを助けただけなのに……」

「牧場に関わするべてが禁忌だ。例外はない」

「じゃあ、村を守るためなら人間牧場の人は死んでもいいの!?」

「どうせ牧場の人間なんてあそこで朽ち果てる運命じゃないの」

「そうだ。余計なことをしなければ死ぬのはそいつだけですんだのに」

「……人間なんて、汚い」

ジーニアスが言うその言葉は、まったくもって正解だ。

けれども汚いのは人間だけではない。

エルフもハーフエルフも同じように……汚い。

「もうよせ、ジーニアス。今回のことは確かに俺が悪かったんだ」

ロイドは、誰のせいにもしなかった。

自分が悪いと、自分の罪をかみしめて……。

「……出ていきます」

「村長。こんな子供にそこまで厳しくしなくても……」

「何をいってるんだ。こいつのせいでたくさんの人間が死んだんだぞ!」

「ロイドは悪くない!牧場に誘ったのはボクだ。だからボクが悪いんだ!」

「それでもディザイアンがねらっているのはロイドだ。それにロイドは元々村の人間じゃない。ドワーフに育てられた、よそ者だ」

「だったら、ボクも出ていく。ボクも同罪だ!」

「ジーニアス、おまえ……」

「……ならば、しかたがない。村長権限でここに宣言する。ただいまをもってロイドとジーニアスを追放処分とする」

そして出て行けと村人たちの言葉。

人間牧場に連れて来られた人たちへの心無い言葉。

腐った、世界だ。

「迷惑かけて、すまなかった」

「あ……はは……あははははは!」

笑いがこみあげてきた。

リセリアの高い笑い声が、村人の言葉を切る。

愉快そうにけれども、汚いものを見る目をしているリセリアの異常に、僅かな恐怖を覚えて。

「そう、わかってたはずだったのにね。この村は腐っていて、村長だけじゃなくて村人もそうだってわかってたのにね!あははははは!」

ふらりと村長の前へ。

綺麗な微笑みを向け、そのまま、殴った。

「あー……スッキリしないや……わたしこんな所で育ったなんて……向こうの人たちはあんなにあったかかったのに……」

先の、正しい選択の未来なんて……もう、どうでもよくなってきた。

「かえりたいなぁ……はやく……」

そう、光のない瞳を、村長ら村人へと向けた。

けれども帰れない以上はまずテセアラに行くしかない。

もうここにはいたくない。

ふらふらとリセリアは歩きだした。

何か村人が言っているが、耳には入らなかった。

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あきゅろす。
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