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S
3-15



「そんな……バカな……」

フォシテスのその体がふらつく。

そして、

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

下へと、落下していった。

「よし!これで魔導炉を止められるぞ!」

最近、ロイドに容赦がなくなってきた。

この中で唯一使えるクラトスが操作をし、無事に停止は終了。

そのまま道を引き返す。

牧場の外では、収容されていた人たちの救助を終えた面々がいた。

「ロイド!……無事でよかった!」

「ああ!あとはしいなに連絡を……」

「!」

「そうは……させん!」

リセリアは完全に油断していたロイドを突き飛ばす。

「……しぶといなぁ!」

さすがに直撃は、痛い。

完全にゼロ距離ではないがそれに近い。

フォシテスに向き剣を抜く。

その背中に、皆が絶句した。

なぜ立って、今こうして剣を握っていられる……。

そう思うほどに、フォシテスの攻撃を受けた背中は服が焼け、背中の皮膚もまた焼けている。

「私も五聖刃と呼ばれた男……ただでは……死なん!劣悪種どもも道連れにしてやる!」

「結構痛いのもらったんで、もう一矢報いたでしょう」

地面がリセリアの血を吸った。

「ディザイアン一の英雄とうたわれたおまえがそのような末路をたどるのか、フォシテスよ」

「……そうか、わかったぞ。人間風情でありながら魔力の臭いを漂わす者!」

クラトスの正体に、ここでやっと気が付いたようだ。

「おまえがクラトス……か」

「それがどうしたと」

「ユグドラシルさまのご信頼をうけながら……やはり我らを裏切るのだな!だから人間など……信用できぬのだっ!」

けれども攻撃は、関係のないショコラに。

それを、

「……ああっ!」

コレットが身を挺して守った。

「まったく……被害ひろげちゃったよ」

最期のその剣が突き刺さった感覚を、フォシテスは遅れて理解した。

リセリアの顔にフォシテスの血がつく。

自分はここで死ぬのだと、やっと理解して。

「ユグドラシルさま!我らハーフエルフの千年王国を必ずや……!」

その断末魔を残し、フォシテスは死んだ。

「コレットは大丈夫?……」

破れた服。

そこから見える、鱗のような肌。

「これは……」

「み、見ないで!見ないでーーー!」

それを手で隠しながらコレットは叫ぶ。

「ロイド!早く連絡を!」

しかし今すべきことはコレットのこれに困惑することではない。

「……でもコレットが……」

「神子はまだ死なぬ!しかしこのままでは大地は死ぬのだ!急げ!」

「ああ、いいよいいよ。こっちで連絡するから」

嫌悪も呆れもなく、当たり前だと言うようにリセリアは言う。

それにロイドはばつが悪そうな顔をする。

けれども今までだって、こうやって代わりにやってきた。

特に何も思わないし、今は時間が惜しい。

しいなに合図を送る。

あとはしいながあれに精霊たちの力をぶつけてくれるはずだ。

空を、暴走した大樹の方をじっと見つめる。

遠くでマナが集まっていく気配がする。

そしてそれが、

「……きた!」

マナの塊が空を走り、大樹へとぶつかる。

甲高いマーテルの悲鳴が響くが、それは無視した。

あれは……違う。

そう、言い聞かせて。

―そう、あれは私であって私ではありません―

だから、何だというのだ。

―あなたを呼んだ私は、彼女であって彼女ではありません―

話しかけるこの声は……。

今このときに話しかけているのを鬱陶しく思いながら。

そしてマナを受けた木は、その姿を消した。

同時に声も、消えた。

「今の泣き声は……?」

「マーテルだろう。暴走した大いなる実りはマーテルそのものだ」

「……そうなのかな……」

『大いなる実りは聖地カーラーンの地中に再び収束した。とりあえずは礼を言おう。……ありがとう。大いなる実りもこの大地も失わずにすんだようだ』

「……すみません。でも、あなたの目的は果たせませんでした……」

『……気にするな』

「大いなる実りが無事ということは、種子と融合しているマーテルも無事なのだな?」

『……おまえにとっては喜ぶべきことだろう。私にとっては……残念なことだがな』

「……コレット。なんとかおさまったみたいだぜ」

「こんなの気持ち悪いよね?……こんなの変だよね?……こんな……こんなの……」

「気持ち悪くなんてないよ」

ロイドは穏やかに言い、コレットに近づこうとする。

「……来ないで!見ないで!」

しかしコレットがそれを拒絶した。

「コレット!」

コレットは意識を失った。

「……大丈夫。気を失っているだけよ。村へ……連れて行きましょう」

また、あの村へ行くはめになるのか……。

「イセリアへ!?ボクもロイドも追放されてるんだよ!」

「コレットの家はイセリアにあるのよ。それに……」

「牧場に捕まってた人たちもいおるよジーニアス。いつまでもここにいるわけにはいかないし、別の街に行くのは無理だよ。……村の人間がどうであれ、ね」

「……そうだな。イセリアへ……行こう」

コレットを抱き上げ、ロイドは言った。

『……ではしいなはイセリアにもどらせる。ではな』

ユアンからの通信も、ここで切れた。

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あきゅろす。
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