S 3-6 シルヴァラントベースに着いて、中に入ろうとするとミトスが言った。 「ボク、ここで待ってます。しばらく……一人になりたいから」 「ミトス……やっぱりボクが笛を……」 「ごめんなさい……直ってもやっぱり、イヤですよね……」 ジーニアスとリセリア。 「あ、ちがうよ。笛のことじゃないんだ。ごめんね」 「……わかった。危ないから、ここを動くなよ」 「はい」 「じゃあ、ミトスが借りたレアバードも返してきましょうね」 「……え?あ、うん。お願いします」 ミトス……というか、クルシスのものだろうけれども。 ミトスはリフィルにレアバードを渡した。 そして中へ。 レネゲードは襲って来ず、むしろ奥へと案内してくれる。 案内された部屋は最初にユアンがいた部屋だ。 「……きたか」 多分、何も言わなくてもユアンは全て理解しているだろう。 「ユアンさん……。ボータさんが……」 「……死んだのか」 「ああ……。最後に任務を果たしたって、俺たちに伝えてくれって」 「そうか……。では空間移転装置を作動させよう。好きに世界を行き来するがいい」 「それだけか!?ボータは命と引き換えにレネゲードの作戦を……」 「ロイド。それ以上は失礼だよ。ボータさんにも……ユアンさんにも」 何も思っていないはずなどない。 「そうだ。……ここから先は我らが口を挟むことではない」 「こいつはずっとあのボータとツラつき合せてきたんだ。俺たちが何を言っても仕方ないさ」 「……わかったよ」 「気を悪くしたらすみません。ロイドも悪気があったわけじゃないんです」 「いや。わかっている」 「そうだわ。私たちの仲間があなたたちからレアバードを借りたようね。お返ししておくわ」 「……?我らが、レアバードを?そんなはずは……」 ユアンが首をひねる。 「どうしたんですか?」 「……いや、何でもない。預かっておこう」 預かっておく、それを誰も気にしていないが。 「……ユアン。悪かった……」 ロイドが謝る。 そして出て行く。 「そうだ……ボータさんが、マーテルを助けてあげて欲しいみたいなことを」 「……」 「別に詮索しませんけど。あとそのレアバード、誰のですか?」 「……我らのレアバードは全て格納庫にのこっていたはずだ……」 「うわぁ……ホラーですね」 「……」 「勝手に持ってったわけじゃないんですね……でも、確かに借りたって言ってたんですけどね……」 「……置いていかれるぞ、リセリア」 「それも困ります」 じゃあ、とロイドの後を追った。 そしてシルヴァラントベースの外へ。 ミトスは言った通り外で待っていた。 「お帰りなさい。もう、帰るんでしょ?」 「ああ。アルテスタさんのところへ送っていくよ」 「うん」 装置は間違いなく作動した。 飛び込んだ先は、見覚えのあるテセアラ。 無事、これで二つの世界を行き来ができる。 真っ先に目的のアルテスタの家へ。 「じゃあ、ミトス。アルテスタさんと仲良くな」 「遊びに来てくれるよね?」 「もちろん」 「元気でな」 「プレセアの妹の仇が見つかるように祈ってるよ」 そんなもの祈らなくてもいい。 「……ありがとう」 結局は殺すことになるのだろうけれども。 「プレセアの妹の仇?それは一体どういうことだ?」 話が掴めないのがリーガルだ。 「そうか。リーガルには話してなかったな」 「あー!あ、でもよ。そんな話をここでほじくりかえさなくても……」 リーガルの正体を知っているゼロスは話を逸らそうとする。 「何いってんだよ!プレセアの妹は殺されたんだよ!」 「殺された?」 「はい。プレセアの妹さんはブライアンさんって貴族に仕えてたそうなんです。でもそのご主人さまに……」 「もうやめよう。プレセアの前だし……」 止めようとするもコレットが話してしまう。 「ひどい奴さ!まだ年端もいかない子供を……殺すなんて!」 「妹……だと?そんな馬鹿な!プレセア。おまえの妹の名は?」 「……アリシア……です」 「……そうか」 全てを、リーガルは悟った。 「何か知ってるのか?」 「その殺人鬼に、心当たりがある」 (殺人鬼……) 違う、リーガルは殺人鬼などではない。 それならばこんなにも心が痛むはずがない。 「……本当ですか!」 「……私をアルタミラへ連れて行ってくれ」 それだけを言って、口を閉ざした。 [*前へ][次へ#] |