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「あ、うん、強かったです」

感想、第一声。

容赦のない大技に、かと思ったら素早い剣技。

まだ、どこか様子がおかしい好戦的なリセリアの動きでウィンガルとプレザを楽に退けた。

息ひとつあがっておらず、余裕だ。

「まだやりますか?」

満身創痍のウィンガルとプレザ。

一方で、全く息も乱れていない上に人数の多いこちら。

「やってくれたな……」

どらが不利かなどわかりきっている。

ミラが再び剣を構える。

「まだ……相手をしてくれるのかしら?」

「ミラ!」

「邪魔をするな」

「違うよ、あれ」

向かってくるのは援軍の兵士。

「潮時というわけか」

「今回は目的を忘れないでくれてよかったよ」

剣をしまい、この場から走り去る。

「また逃げるのか、イルベルト殿?」

挑発、とも少し違う。

「あなたが逃げたから、ナハティガル王は……!」

「……っ」

「ローエンさん!」

リセリアの声に、ウィンガルの言葉で縫い付けられた足が動いた。








雪で足場の悪いモン高原を再び引き返し、シャン・ドゥへと兵に捕まることなくたどり着いた。

辺りに注意するが、普通の街……だ。

「私たちのことで城から報せが届いているかもしれませんね」

ユルゲンスがこちらに気が付く。

近づく彼に、少し警戒をする。

けれども、

「謁見はどうだった?」

かけられたのは普通の言葉。

話しは来ていないようだが、時間の問題になるそうだ。

「すまないユルゲンス。話はまたの機会にしたい。すぐ発てるか?」

「まあ、できないことはないが……何か急ぐ理由でもできたのか?」

「うん、ぼくたちガイアスに……」

余計なことを言おうとしたティポを、ジュードが取り押さえた。

それを不思議に思いながら。

「急ぐ必要はなくなったよ」

「あ、クズ」

もうすでに、呼び方が名前ですらなくなった。

「アルヴィン!」

「やつら、今頃せっせと山狩りでもしてるからな」

「お前が……?手土産のつもりか」

「お土産はその首でいいって言ったよね?……よく戻ってこれたね。その神経を疑うよ」

「土産も何も、仲間だろ、俺たち」

「……」

「どうだか」

とにかく険悪……というよりも、温度差が激しい。

「なんだよ、信じられないって?お前たちが信じてくれてるって知ってる、そう言っただろ」

「でも、その時に自分も信じてるって言わなかったよね」

「まだ俺のこと信じてくれるよな?」

一番扱いやすいと思ったのか、ジュードへと言う。

「う、うん……」

流されるよういジュードは返事をする。

「サンキュな、ジュード」

「お、おかえり……帰ってきてくれて、うれしい……です」

言っていることと、表情・声音が一致していないエリーゼ。

「くくく、なんだそれ」

「とにかく、しばらく時間は稼げそうですね」

「クズさんの言ってるのが本当ならね」

「クズはひどいな」

「次やったら、煮るなり焼くなり好きにしてもいいってことだよね、戻って来たってことは」

脅しではない。

リセリアは本気だ。

「おー、怖い怖い」

「事情は効かない方がよさそうだな。まったく、君たちと関わっていると飽きないよ」

だいたいの話はつかめただろうに。

それでもワイバーンを貸してくれるユルゲンスの人のよさ。

先に檻に行っているよ、向かう。

それについて行くようにアルヴィンも歩き出す。

が、

「待って、アルヴィン」

戻ってきたことに納得などできるはずがない。

「まーだ、納得いってないってか。他の連中もだいたい同じってとこかな」

「当たり前でしょ」

「しゃーないか」

信用されていない自覚は、一応あるのか……。

「四人で初めてニ・アケリアに行った時だよ。社から俺一人でどこかに行ったろ」

「確か、私が社を出るとジュードとリセリアが一緒にいた時だな」

「そう、その時だよ。ウィンガルと会ったのは」

「密約を交わしていたのでは?いざとなればミラさんを引き渡すと」

「アルヴィン君ひどい!やっぱミラやジュードやリセリアを裏切ったんだ!」

「待てよ」

責めるレイアに反論する。

「確かにあの時は色々考えてたけど、今回は逆にそれが利用できると思ったんだ。ワイバーンの許可が下りたのだって、事前に話を通してたからなんだぜ」

「え、それって、ガイアスの前で裏切ったのは……」

「そう。あの場で裏切ったフリしてなきゃ、ワイバーンも使えなかったってこと。だから、わざわざシャン・ドゥとは真逆に逃げたってウソついたんだ」

「僕はアルヴィンを信じたい……けど、まだ……」

色々と前科が多い。

それが本当なのか、口だけではどうとでも言える。

「そうだったな。あのプレザという女だ。キジル海瀑の時といい、知った仲のようだったぞ」

困った、と頭を掻く。

「何が聞きたい?」

「あのプレザて人、どういう人なの?」

「……」

言いよどむアルヴィン。

「……アルヴィンっ!」

「なんだお前……泣いて……」

「泣いてなんかない!ただ、僕は……僕は……」

「出会いは俺がラ・シュガルの情報機関に雇われていた時だよ。あいつはア・ジュールの工作員として、イル・ファンに潜入中だったけどな」

「それで?」

「その後、個人的になんつーのよ、色々あったのは聞かないでくれよ」

プレザの言動からも、まあこれは嘘ではなさそうだが。

「納得はした。けど、まだ信用しきったわけじゃないからねっ」

「くくく、ジュード君はかわいいね」

「な、なんだよそれ!僕は怒ってるんだよ!」

「わかった、わかった」

からかって遊んでいるが。

「ふむ。アルヴィン、最後にひとつだけいいか?」

「なんなりと」

「お前が私たちに肩入れする理由を教えて欲しい。メリットがあるのか?」

「今さら聞く?優等生やみんなが大好きだからに決まってるでしょーよ!」

無理がありすぎる理由だ。

言い方もわざとらしい。

「ウソつきやがってー!」

「なんだそれ、ちょっとヒデーじゃねえか!」

「……」

「お嬢さんはご不満でも?」

「もういい。あなたを信用するのは怖いってことが分かったから、聞きたいことはないよ」

「おいおい、信じてくれねーのか?」

「もう……信じて裏切られた時の絶望は味わいたくないしね」

低く冷たい声で、リセリアは返した。

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あきゅろす。
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