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イル・ファンへの船は全便欠航。

サマンガン海停へととりあえず行くこととなった。

独裁体制にも不満を持っている声も多々聞こえる。

なにか、この王はやろうとしているのではないのだろうか……。

実際にサマンガン海停へ着いたが、

「思ったほど厳重じゃないが……」

「兵士は配備されてるね。注意しないと」

やはり兵がいない、ということはなかった。

監視していたり、巡回している姿もある。

「妙だな……。一時はア・ジュールにまで兵を出していたというのに」

「君らを追うよりも重要なことができたか、な」

「そもそもハ・ミルの兵士って、ジュード君とミラちゃんを追うのだけが目的だったのかな?」

なにか、ついでだったりはしていないだろうか。

村長の代わりようから追って来たとは思うのだが……。

「他にあったとか……」

「考えても仕方ないだろう。しかし好都合だ。気付かれぬうちにイル・ファンへ向かおう」

恐らくはまた、獣道を通ったりもあるだろう。

「……ごめんね、エリーゼ。大きな街に着くまで、もう少し待ってね。そしたら、きっと引き取ってくれるいい人がいると思うんだ」

「……え、でも……わたし……」

「え、初耳なんだけど」

「今初めて言ったからね」

「ジュード君、それなんのことー?」

「そういうのちゃんと言ってほしかったよ。わたしも考えてたんだからね!」

それに、

「いきなり引き取るとか、そういう話してもエリー困るよ……」

「じゃあリセリアはどうするつもりだったの?」

「しばらくはおじさんとおばさんにお願いして、全部終わったらエリーのしたいことを叶えてあげようかなって思ってたんだけど……」

とは言え、しばらくは旅になる。

「でも、わたしはエリーの意思を叶えたいかな」

どこかに引き取られたいのであれば、そうする。

こちらが会いに行けばいいのだ。

もし、

「一緒に来たいのなら、わたしは止めない」

「そんなの危険すぎるよ!」

「それでも、エリーが決めたならそうしてあげたい」

ジュードは納得いかないようだが。

「とりあえず、二人待たせちゃってるから行こうよ」

ジュードから、返事はなかった。

怒らせてしまった、かもしれない。

それはそうと、

「ところで……あれ……」

それは先に行っていたミラとアルヴィンも足を止めて戻ることになった。

リセリアの目に飛び込んできた、それのせいだ。

「この手配書……ジュードとミラ!?」

「わー、ふたりともキョーアクー!」

「これが私とジュードか?」

なぜ、手配書はどこも酷いのだろうか。

(昔のロイドの手配書もひどかったけどこれは……)

「不幸中の幸いだな。これなら捕まる心配はなさそうだ」

「……よくないよ」

また思い出したようで、落ち込んでしまったが。

「まー、自意識の強い年頃にはキツイよな」

「違うよ!僕はどうでもいいけど、ミラはこんなんじゃない」

ミラについて怒っていたのか。

「うむ、確かによくない。私が現在の形象を成したのはこの外見が人間の半数……つまり男性全般に対して有利だからだ」

やけにゲスい精霊だな、ミラは。

「手配書なんだから、似てないほうが見つからなくていいじゃない……」

ずれている二人へリセリアは呆れながらも突っ込む。

「だが、私が手配書のように非魅力的ならば、基本戦術を見直さねばならない」

「結構、生々しいこと考えてるのな……」

「ジュード、正直に答えてくれ。男性視点で見て、私は魅力ある存在だろうか?」

「えっと、ミラは……」

ちらりとリセリアを見る。

彼女はジュードに気が付いていないようだが。

「すごくステキ……だと思う」

「うんー、セクスィー!エリーもミラ君みたいになりたいってー」

「ティポ!」

ミラがエリーの未来予想図になるのか……。

この可愛いまま、成長すればいいなと思いながら。

「自信もっていいよ、ミラ」

「具体的にはどこらへんが魅力?」

「そりゃ、いい匂いするとことか、ゆれるとことか……」

「ゆれる?」

「わかってないならリセリアはいいの!」

と、はぐらかされたが。

「なるほど。貴重な意見、感謝するぞ」

「いやぁ、ジュード君も男の子だねぇ」

「い、今のは一般論だからね!そ、それよりも!」

もう一つ。

酷い絵の二人に反して、

「こっち、リセリアですか……?」

美化された絵が。

「手配書じゃなくて、行方不明になってるけど」

「おかしいねぇ、一緒に出てきたんだけど……かたや重罪人なのにかたや行方不明扱い……」

けれども、絵も髪を縛っているものだ。

リボンを解けば、

「はい、変装完了」

髪型だけで、雰囲気はかなり変わる。

「わたしはこれで大丈夫でしょ」

髪型を変えただけで、イメージは変わる。

人はみんなそうだ。

「なんなら、ミラちゃんの髪しばってみる?」

案外わからないものだよ、とリセリア。

ミラは、考えておこうと返事を返した。

(しかし……ただの学生を行方不明とか……)

そのおかしなことに、疑問を抱きながら。

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