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4-sub2ジュードの代診2



「みんな落ち着いて!冷静に対処しましょう」

「母さん、どうしたの!?」

ただならぬ雰囲気であるのはわかる。

そこから焦りなども見えるのだ。

「ああ、ジュード!リセリアも!鉱山で落盤事故があったの」

「落盤!?鉱山は閉山になったんじゃ……?」

「最近、新しい鉱脈が見つかる可能性が出て、調査を始めたんだ」

「あそこ……魔物も、いっぱいなのに……?」

掠れたリセリアの声にエリンは首をひねる。

けれども今はそれどころではない。

「調査ということは、事故の被害は少数なのか?」

しかしそれには、言いよどみながら答えが返って来る。

「あ、ああ。鉱脈調査の鉱員が一人と……」

「……案内役のお父さんが」

エリンの慌てようはこれが原因だったようだ。

「大先生が……?ど、どうしよう、ジュード、リセリア……」

それには慌てて返事が来る。

「もちろん助ける!人でを集めて鉱山に向かおうとしてたところだ」

「待ってください!状況がわからないのに、大勢で鉱山に入ったら二次災害が起こるよ!」

「マティス先生には、みんな世話になってる!危険は承知の上だ!」

「父さんが治した体を粗末にしないでください!」

「うっ……」

「あそこには魔物、けっこういましたからね。らくばんの、じこだけがおこりうるひがい、じゃないです」

「うっ……」

二人に言われ、ぐうの音も出ない。

「まず、僕たちが状況を確認してきます。大丈夫、鉱山の奥まで潜ったことあるんです」

「ジュードの判断が正しい。ここは私たちに任せてくれ」

ジュードとミラが言う。

そして、人が集まっても魔物に対抗できる力を持っているのは、ごくわずか。

「わかったわ。気を付けるのよ、ジュード、リセリア」










フェルガナ鉱山の奥までやってきた。

途中、ジュードは心配なのか無言。

少し無茶をしているのも見られたが自制できており、問題はない。

「あ」

視線の先には倒れているディラック。

「父さん!」

遅れて、返事が返って来る。

「おじさん」

「うう、ジュード……それからリセリア……か?」

「目をやられたのか?」

「大したことはない。落盤の粉塵で一時的にやられただけだ。私よりも、鉱員を頼む……」

「意識がないよ!岩で頭を打ったみたい」

なら動かせないな、と様子を見る。

「動かしちゃダメだ!……脳内出血してる」

「ねえ、ミラちゃん。ここ、これいじょうくずれないか、ノームにきいて?」

「ああ」

目を閉じ、そしてすぐにまた目を開く。

「落盤自体は大規模なものではないな。これ以上は崩れないと、ノームが言っている」

「わかった。レイアは、ル・ロンドに戻って鉱員さんを受け入れる手配をして」

「ジュードはどうするの?」

「リセリアと鉱員さんを応急処置する。このまま動かしたら危ない」

「ん」

「治癒功、使える?」

「たいじょうぶ」

「治癒功で脳内出血の手当をするだと!?出血箇所を見誤れば、即命取りだぞ!?」

「わかってる。けど、やらなきゃ」

「このままなにもしないと、このひと、しんじゃうかもしれないです」

「くっ、私の目が見えれば……」

「大丈夫。僕が判断するよ」

「ジュード……お前……」

「ぼくじゃなくて、ぼくら、だよ」

準備万端、といつでも術をかけられる様子。

「ここはジュードとリセリアに任せよう。レイアは、急いで街へ」

「うん!」

「ミラちゃん。かばんのなかにおみずあるから、おじさんの目、あらって」

そしてパン、と自分の頬を叩く。

「さぁ、始めるよ」

「いつでもどうぞ」








診察室の前で待っていれば、扉が開く。

エリンとディラックが、安心した表情で出てきた。

「鉱員さんの容態、落ち着いたわ」

「うむ……私の視力も、なんとか戻ったようだ」

「はぁ……一時はどうなるかと思ったよ」

レイアも酷く安心したように深いため息を吐いて言った。

「鉱員さん、お礼を言っていたわ。よくやったわね、ジュード、リセリア」

「ううん。特別なことはしてないよ」

「やれること、やっただけです」

「お前たちは、やらねばならないことがあるのだろう?さっさと行くがいい」

「冷たいなー、大先生」

(これがツンデレというやつか)

(セルシウスまで変な知識を覚えてる!?)

「またしばらくジュードとリセリアを借りるぞ」

「私に断る必要はない。そいつらは、もう一人前だ」

あらあら、とディラックを見るリセリア。

ジュードも驚いている。

「ジュード、お前の判断は的確だったぞ」

以前の代診の時とは、打って変わった言葉だ。

「父さん……」

レイアとミラの表情もまた、優しいもので。

「行ってきます!」

あの時言えなかった言葉が、素直にジュードから出てきた。

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あきゅろす。
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