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05


この高校は昼休みの時間(次の授業の予鈴が鳴るまで)なら学校の出入りは自由だ。
しかし基本的には家の近い生徒が忘れものを取りに行ったり、
近くのコンビニに買い物に行く程度で、
学生服で生徒手帳に外出理由を書き、
裏門に立つ教師に見せて承諾を得るのが原則だ
ゲームセンターやファーストフード店に行くなどは禁止されているが、
一時間とない昼休みに、門を出て往復40分はかかる山道を下り、
そういったところに遊びに行こうとする生徒はいない

登下校時は一番近くの駅からバスが出ているんだけど、昼休みはもちろん出てないしね。

それに裏門から出るのが原則で、裏門からだと登下校に使う道までまた10分はかかる
だから、山道を下ったところで遊ぶ時間はないということ。

そう、この高校は面倒くさいところに建ててある
山奥、というよりは山の上に近い
なんでこんなところに建てたのか、初代校長に聞いてみたいよ、本当


(実は長い上り坂、の周りに木が生え茂って、
山道の様に思われてるだけで、ただの坂の上の高校なんだけどね)


そしてまたこの裏門に立つ教師たちが面倒くさくて、
コンビニはもちろん昼休みに外に出ようとする生徒は本当に少ない
生徒手帳を見て承諾するときに、しっかりと顔と名前、
クラス出席番号、必要な時は住所までも。確認してから承諾するのだ
そして、戻ってこない時には担任と親に連絡がいき、家に帰れば親に怒られ、
翌日は教師たちに怒られ反省文を書かされるという始末だ

ぼくも最初話を聞いたときは怖かったけど、弁当を忘れるたびにコンビニに行っていたので
今ではもうすっかり顔も名前も覚えられ、顔馴染みだ。


「木山、またお前か」

裏門に行くとぼくの顔を見たこわもての教師が呆れたようにそう言った
ぼくは生徒手帳を開いて渡して、軽く笑う

「えへへ、お手数おかけします」
「ったく、物忘れひどいんじゃないか?」

もう一人の、こっちはぼくの学年に人気の教師が言ってぼくは反論した

「えーでも今年に入って初めてですよ?」
「あ?そうか?」
「そうですよ!」

ここにくるのも春休みを入れて2ヶ月ぶりくらいだ
それなのに、なんてひどい

「そういや木山も2年か、よく進級できたな」
「あぁ、そうだな。その物忘れのひどい頭で」


なんてひどい!


「もういいです!いってきます!」

強面の教師から生徒手帳を受け取って、逃げる様に走り出した

「あぁ」
「いってこい」

2人がそう言うのが聞こえてなんだか心があったかくなった。
ふふ、自然と笑顔がこぼれた

さっきまで情けなくて泣きそうだったのに。




些細なことでいい、それが幸せだと知っているから。

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あきゅろす。
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