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恋して、王子様
俺が好きになったそいつは、この学校の王子様だった。



して、王子様




真水優也、2年5組、21番
身長、170後半くらい、体重知らん
血液型知らん、誕生日、以下略

片思いの君、真水のことを俺はよく知らない。
知っているのは顔と、
そいつがこの学校で男女ともに人気のあるやつだということだけ。
人気なのは、無論顔もあるが、それだけではない、というのがまた同じ男として腹立たしい。
真水は頭がよく運動も万能だ、そして、優しい(特に女子に対しては)。
もう甘い、とろけるような笑顔向けられれば初対面だろうが男だろうがほとんどの人間が惚れるんだろう。
なんでそんなことが言えるか?俺がそのうちの一人だったからだよ!


だがしかし、勘違いしないでもらいたいのは、その笑顔はこんな平凡なような俺に向けられていたわけではないということ。
勘違いしたのは俺なんですけどね!
ある日の廊下だった、俺の後ろにいたらしい女子生徒に笑顔を浮かべてを振っていた真水に戸惑い赤面し、心奪われた。
俺かと思ったんだ、一生徒で喋ったこともない平凡な男にまで笑顔を向けてくれるのだと、
その優しさに、……顔の良さに惚れたんだ。

まぁ、結局顔だっつーことだよチクショウ

「あー、やってらんね」
自己完結したところでようやく目の前に開いていた弁当に手をつけ始める。
なんで突然こんなことを言い始めたのかというと、だ。それは俺の目の前にその本人がいるからであって、まぁなんだ。
いわゆる、現実逃避という奴だ。

「なにがやってらんない?」
不思議そうな瞳で見つめてくる真水。あ、すきだ。
クォーターだという真水の髪と瞳には僅かに銀が入っている。銀髪、というにはそこまでではないが光に当たると銀色が映えて、すごく綺麗。
「…なんでもない」
無愛想に返すとふーん、と言われてしまった。
あ、会話終わっちゃったよ。
ちょっと、俺もっと愛想良くしろよ。いやいや無理言うな、思い人が目の前にいるんだぞ無理無理!
だからってその思い人と話せる絶好のチャンスじゃねえか俺。でも、あ、ほら俺いま弁当食ってるし、喋りたくても喋れないし!
頭の中で積極的な俺と消極的な俺が言い合う。
結果弁当を食べるのに集中をして、喋らないということになったらしいので黙々とご飯とおかずを食べる。
今日の弁当は青椒肉絲と豚の生姜焼きです。男子高校生の弁当ってほんと栄養偏ってるよな。美味しいからいいんだけど。
黙々、

「……」

黙々、食べ続ける俺を前に座っている真水は頬杖をつきながら見ていた。
なになに、ご飯粒でもついてますか!やめてはずかしい!
じわじわと熱が集まっている顔。やばいって何でこいつ赤くなってんの?きめー。とか思われたら俺終わるから。
もしそんなこと言われたらもう開き直るわ。
いっそ「お前が見てくるからだろうが!!好きな奴に見られたらそりゃ照れるっつーの!!あぁそうだよ俺はお前が好きだよ!!真水優也が好きなんだよ馬鹿野郎!!!」って愛の告白して逃げて、次の日転校する。
次の日にはもう俺、ここにはいないとか。噂にしようとしても本人いないとか。ぶっほぉ。
「あのさぁ、」
「ひぃ!」
またしても現実逃避という名の妄想に耽ってしまった。
妄想の世界から俺を引き摺り出したのは俺を見続ける真水優也だった。
「な、なにか」
冷静を装うと必死になる俺に、そんなことお構いなしの真水は手を伸ばしてくる。
な、なに、なに
真水の手は俺の口の横あたりまでいって、持ち主の口元に戻って行った。

「米、ついてた」

そう言ってそのお米を食べたらしい真水は、いたずらっ子のような笑みを浮かべた。


俺、ハート射抜かれました。




ちなみにここ、教室ですよみなさん。
人気者がいれば自然と視線はこちらに向いてるんですよみなさん。


俺、いろんな意味でしにました!




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あきゅろす。
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