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-日記連載-
4.
部屋の鍵を開けて、先にティエリアが入るように体をよける。
『ありがとう』
と、口にし、履物を脱いであがると、鍵を閉めたアレルヤがそれを揃える。
上がり様にティエリアは、自分のシャツに手をかけた。
湿った髪が衣類に絡まり、ふるり、と、頭を振って脱ぎ、それを手に部屋に入って行く。
『もぅ、ティエリア。お行儀悪いよ!』
後から来たアレルヤにシャツを放ると、置かれてある籠の中身を漁る。
『アレルヤ、これ!着たい』
胸に抱えたのは、先程の浴衣。
『はいはい。それも脱いでね』
クォーターパンツを指差して指示をすると、浴衣を広げて肩に羽織らせる。
その間に帯の準備をし、脱ぎ終わったものを受け取ると、手際良く襟を合わせ、帯を締め整える。
『はい、出来た!』
乱れた髪も手櫛で整えると、頬にキスをして微笑む。
『可愛い!』
『可愛いくない!』
『はいはい』
笑いながらティエリアの服を畳んで鞄に仕舞っていると、シャツの背中のがいきなりめくられた。
『! 何?どうしたの?』
振り返れば、珍しく嬉しそうな表情をありありと浮かべたティエリア。
『脱げ』
『は?』
有無を言わさず、アレルヤのシャツを無理矢理引っ張る。
『ま、待って!ティエリア』
『着せてやるから脱げ』
よく見れば、自分、ティエリア、浴衣の順に一列に列んでいる。
『…出来るの?』
『今よく見た。任せろ』
今日のティエリアは完全にお子様モードで、明らかにテンションが高い。
それは、楽しい!を満喫している証拠で、喜ばせたいアレルヤには願ったり叶ったりなのだが…。
だが結局、自分で浴衣を着たアレルヤ。
自分がティエリアの世話をしたいのもあるが、ティエリアに任せていては、生活するには色々と間に合わないのである。
ようするに不器用なので、アレルヤが手を出してしまい、ティエリアが上達しないのもあるのだが、やはりここでも不器用炸裂だったのだ。
床に座り込み、自分が着せたかったのに、と、繰り返すティエリアの頭を優しく撫でる。
『僕の方が背が高いから…ね、ティエリア。立って着せるものだし、ね?』
『でも、着せたかった』
ぎう、と、アレルヤに擦り付くようにしがみつくと、その胸板に、こと、と、頭を預ける。
『ね、アレルヤ。アレやっていい?』
『アレ?』
『いい?』
アレが何か解らないが、どうも駄目とは言い出しにくい雰囲気だ。
見下ろす自分に見上げティエリアの合わさる視線。
遠目で見る分には、きっと良い雰囲気なのだろうな…、と、他人事の様に思いつつ、この流れからすると甘い事ではなさそうな気がする。
『…いいよ』
ティエリアの瞳が、夜空にあった星達の様に輝いた。

『違う!』
ティエリアの厳しい声が部屋に響き、これで何度目だろう…と、思いながらもアレルヤはもう一度準備を整える。
『さっきのテレビみたいにするんだ!』
『ティエリア、僕は見てなかったんだけど…』
『やって!』
両腕を万歳にして、その場で、くるる、と、回って見せるティエリアが強く言い放つ。
『だからこうして教えている』
夕飯前にティエリアが見たらしい映像は、和服を着て、帯を引かれると、人が回転したと言うものだった。
それがアレの正体だったのだが、アレルヤがくるくるしない!と、駄目出しをされているのだ。
『ね、ティエリア。それは番組だからさ…』
『嫌!くるくるして!!』
『ワザと回っていい?』
『駄目!』
と、言いつつも、本人も飽きて来たのか、疲れて来たのか、じゃあ、あと3回だけ、と、約束をした。

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