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-日記連載-
2.
部屋での食事も選べたが、二人の場所に食事の時だけとはいえ出入りされるのも…と、夕飯の時間を伝え、食堂での食事をお願いした。
でも、誰から見ても可愛く綺麗なティエリアを、他の人に見せるのも惜しいな、と、思ったりもしたのだが、ま、たまには見せびらかす優越感に浸るのも…と、自問自答したアレルヤ。
宜しければ作無衣か浴衣でお越しください、と、言われたが、流石にその姿は人には見せたくない!と、言う事と、風呂は食事の後と言う事もあって、そのままの服装で食事に出掛けた。
あ、やっぱり…室内に足を踏み入れれば空気が変わる。
ティエリアが見られているのはすぐに感じられたが、その本人は我関せずで、物珍し気に室内の装飾を見回している。
入口前で伝えられた席に、それぞれの向かいに座ると、程なく給仕の者が現れ、テーブルに既にセッティングされてある料理を、お品書きに沿って説明してくれる。
先付に始まり、小鉢、煮物、刺身…今回のメインに行き着くまでにかなりの品数がある。
ティエリアが食べられない外見そのままの料理も含まれているが、そこは他の料理に差し替えをお願いしてある。
お品書きを説明されて、柳眉をひそめて居たティエリアだったが、アレルヤからの笑顔と言葉で安心したように微笑んだ。

『…アレルヤ、多い』
その言葉に苦笑いを浮かべるアレルヤ。
セッティングされた料理を食べ終わる頃に、お品書きに書かれてあるそれより先の料理と皿が入れ代わって行くのだが、アレルヤでさえメインまでの品数が多いな…と、思う量である。
口コミでのチェックもしたのだが、本当にこんなに多いとは思わなかったのだ。
話半分ではなく事実だったか、と、思ったが、こればかりは仕方が無い。
『食べられるだけでいいから。僕がお腹一杯になるくらいだからね』
『でも…』
『デザートが食べられなくなるから、少しずつ摘めばいいよ』
デザートはティエリアの髪の色を思わせる巨峰のグラスにブルーベリーソース、それにベリーのソルベ。
とても綺麗な紫色で、ティエリアに食べさせたいと思ったのだ。
なのにこのままでは、デザートの前にお腹一杯に為ってしまう。
『ね、残すのが嫌なら僕が貰うから』
『…解った』
喋っていると満腹になりそうだ!と、ティエリアが言い、アレルヤが笑いながら相槌を打つ。
デザートの頃には二人ともお腹が一杯だったが、そのデザートが出て来ない。
先に食事をしていた客達も居なくなり、今は二人だけになってしまった。
テーブルに置かれたお茶のセットからお茶を入れ、ティエリアに渡すと、ふぅ、と、溜息とも吐息とも取れる息を湯飲みに吹き掛けた。
『おいしかった?ティエリア』
『だが、量が多い。デザートが食べられなくなりそうだ』
食べれないでは無いあたり、最後まで食べてくれる気なティエリアにアレルヤが微笑んだ。
だが、待てど暮らせどデザートが運ばれて来ない。
ちら、と、時計で確認すれば、食事を終えてから20分くらいは経過してそうだ。
『係りの人を呼びたいんだけど…』
『どうやって呼ぶんだ?』
テーブルの上を見渡すがそれらしき物も見当たらないし、そのような説明も受けていなかった。
少し満腹感から開放されたのか、テーブルの上の調味料などをティエリアは触り捲くり、蓋を閉じたり、中身を確認したりして待っていた。
『や!』
『あはははは』
突如部屋に響いたのは呼出しと判る音。
手にしていた四角い小さな箱を、ティエリアは放り出した。
そのお陰で、今はデザートを口にしている。
『まさかアレが呼出しだったとはね』
『先に言って欲しい…』
返事をしながらもティエリアは、目の前のデザートを食べるのに忙しいらしく、視線はソルベに向けたままだ。
『おいしい?』
『すごく!』
『少し間が空いたのが良かったね』
こく、と、頷き、ティエリアは嬉しそうにグラスを口に運び、その様子をアレルヤも嬉しそうに見詰め、嬉しさの花が重ねて咲いた。

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