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連綿たる経常
風が動く。

「ぁ……、あのっ」
「黙れ」
「……神、田?」
「……」
「ユウ?」
「……このままでいろ」


ぎゅうっ、と、強く抱き締めて来たかと思うと、そのまま肩に顔を埋(ウズ)めて。

首筋に掛かる、静かな吐息と呼吸音が耳に響く。

談話室の扉は閉まっているが、彼は鍵を掛けたのだろうか?

誰か入って来てこの現状は……、相手を驚かすに違いないけれど。

どかどかと近付いて来て、不機嫌な顔をした彼に咄嗟に立ち上がったら。

しがみ付く様に抱き締められて、……正直反応に困る。


「……ユ、」
「喋るな」


彼の額が首に当たり、その前髪が、ざり、と、擦れた。

肩に乗った重さが少しだけ、ふっと避けると、吸われる感触。


「っ、痛っ」


ちゅっ、と、リップ音とキスマークを首筋に乗せて、また重さが戻る。


「……アレン、」
「はい」
「俺が好きか?」
「誰よりも好きですよ」
「……そうか」
「貴方を一番に想っています、ユウ」
「ん、」


すり、と、猫のような仕草で、そのまま肩に甘え付く。


「……アレン」
「はい」
「側に居ろよ」
「はい」


腕を回してやわらかく抱き締めると、彼の背中から少しだけ力が抜けた。


「ユウ……」
「ん?」
「愛していますから。貴方だけを」
「行ってくる、アレン。…………ぅ」


ぽそり、と、届く小さなお礼の、ありがとうと言う言葉。

言い終わるか、終わらないかで、彼が離れて、それに合わせて距離を取ると。

突然の風のように訪れた時と同じく、また、突然の風のように彼は扉から消えた。

何があったのか、何か思い立ってか、その何の部分は解らないが。

でも、彼の事が好きなのは、誰よりも解っていた。


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