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連綿たる経常
マモラレテ。

「どうした?」
「……」
「アレン?」
「……何でもない」


そっと後ろから近付いて、ゆっくりと抱き付くと、腕を回して、彼を抱き締めた。

部屋に入ってから下ろした髪から、やわらかく彼の匂いがして、顔を背に埋(ウズ)める。

さらさらとした、触り心地の好い髪と、大好きな匂いと、手に入れた彼。

きゅ、と、抱き締めた腕に彼の手が触れて、なぞるように動くと、手に手が触れた。


「どうしたんだ?」
「……どうもしないもん」
「じゃあ、顔を見せろ」
「……嫌」


ただ単に、別に深い意味等は無くて。
ただ単に、何か少し寂しい気がして。

向けられた背に、擦り寄りたくて、その温かさが欲しくて。
独り占めのように抱き締めて、ただ、抱き締めてみたくて。

でも、きっと、情けない顔をしているのは、間違い無い気がするから。

心配をさせてしまうから、心配をさせたい訳ではないから、見せたくない。

でも、結局は彼を煩わせてしまうのは、現状から行けば避けられなくて。
ごちゃごちゃと思い悩む内に、彼に抱き付く事と、黙(ダンマ)りしか出来なくて。


「アレン」
「……ん、」
「顔を見て抱き締めさせて欲しい。駄目か?」
「……」
「アレン、抱き締めたい」


静かに、漣のように届く誘いの声が、優しくそっと包んで甘やかして。

腕の力が緩んで生まれる隙間で、その空間での反転により。

抱き締められる側へと、安心する腕の中へと、ぎゅっと囚われる。

額に触れる感触は唇、掛かる吐息に、ひくり、と、体が震えた。


「アレン……」
「ユウ……」
「ありがとうな、抱き締めさせてくれて」


もう一度キスを額に、そして、ぎぅ、と、抱き締めると。


「顔、ちゃんと見ても良いか?」
「……」
「キス、口にしたい」
「……ん、……ぃい、」


少しだけ顔を上げると、幸せそうに笑う彼の瞳とぶつかった。


「俺はいつでもお前の傍に居るんだからな、アレン」
「ユウ……」
「寂しければ口に出せ。俺に遠慮は要らない」
「……ん、……わかっ、た……」
「良い子だ、アレン」


「ユウのせいで、僕は甘ったれになる気がする」
「もっと甘えれば良いさ。アレン」


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あきゅろす。
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