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ごくたまに、君はやさしい





夕方、コンビニの帰り道。


「寒いね…」


そう呟いて、首を亀みたいにマフラーの中へ縮めた僕に、


「な」


シンちゃんは背を向けたまま、ポケットに手を突っ込んで短く応えた。

それはもう応えとは言えないくらい短い応え。

まったく、素っ気ないったらないよ。

一応僕らは付き合ってるカップルさんで、もうそれなりのことだってしてる。

でも、男同士だからって理由だけで、外じゃ絶対にベタベタしない。

当たり前だけど。


「あーあ、手袋してくればよかったよぉ」


帰るのは僕の家。

って言っても、帰れば親兄弟がいる家。

何だか騒がしくて落ち着かないからって、二人でコンビニまで出掛けた。

でも予想外に寒くって、新刊の雑誌もまだ出てなくて、コンビニの中はあったかかったけど、何も買わないで時間潰せるほど僕の心臓には毛が生えていない。

シンちゃんはシンちゃんで、雑誌がないなら用はないみたいだし。

だから結局、ただ寒空の下を散歩しただけになっちゃった。


「雪、降りそうだね?」

「だな」


さっきから懸命に『寒いねアピール』してる僕に、シンちゃんは全然気づいてくれない。

それでいいのか、シンちゃん!

だってこのまま家に帰ったら、たぶんもうシンちゃんはシンちゃんの家に帰る時間。

そしたら、ただ寒空の下の散歩だって、今が二人きりの少ない貴重な時間だよ?


「シンちゃんは寒くないの?」

「寒いけど…冬だし」

「そうだけど」

「そう」

「いいなぁ、シンちゃんのポケットついてて」

「……」


しがない高校生には、寒さとイチャイチャは切っても切れないアメとムチみたいなもんだ。


「僕のポケットついてないから…」


シンちゃんはあんまり好きじゃないのかもしれないけど、僕はもっとシンちゃんとイチャイチャしたい。

爪の先だけでも、シンちゃんに触れていたいのに。


「おらっ」


と、そう言ってしぶしぶ、シンちゃんは僕に手を差し出した。

ぶっきらぼうに、そっけなく。

僕に背を向けたまま。

でも、その耳が少しだけ赤くなってるのがわかって、


「うん」


僕はクスリと笑った。

言葉じゃない分いっぱい伝わる。


「アキん家着くまでな」

「うん」


ごくたまに、君はやさしい。


「大好き、シンちゃん」

「バカ」


胸と指先が一気にあったかくなった。





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*11.04.30*紗也




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あきゅろす。
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