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その笑顔に皆軽く頬を染めて会釈を返し、足早に通り過ぎていく。
その後、壁の向こうで「キャ〜〜ッ!!」と騒ぐ女特有のミーハーな声が聞こえた。
「……」
玲司はそれを背後に感じながら、淡々とエレベーターに乗り込み、『閉』と『B1』のボタンを続けざまに押した。
エレベーターの扉が閉まり、二人きりになった途端、
「相変わらずですね…」
玲司はうんざりした目で遠野を見上げた。
勿論、嫌味満載のつもりで。
が、
「職場は働きやすいのが一番だろ?」
遠野はわざとらしく眉をあげて涼しげに笑う。
――悪党面…。
玲司は苦笑すると、視線を外して点滅する階数を見上げた。
「機嫌が悪いな、玲司」
「……」
「何かあったか?」
遠野が携帯のメールをチェックしながら、チラッと玲司に横目を向ける。
「別に」
玲司は無愛想に呟くと、ダラッとガラス面に凭れ掛かった。
外のイルミネーションが少しずつ近づいてきて、眩しく夜空を照らす。
「…そうか」
不貞腐れても見える玲司の顔に、遠野はふわりと小さく笑ったきりまた携帯に視線を戻した。
玲司の不機嫌姫っぷりにはバスケ部全員が慣れていた。
なんだかんだいって、玲司は出来る奴で、口だけじゃないことを皆知っている。
やる時はやる。
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