: 大地の変化に、頭がついていかなかった。 幼い大地は、今でも玲司の記憶の中で無邪気に笑って、目を輝かせてバスケットボールを追い掛けている。 来室者名簿をまとめながら、玲司はチラッと大地を盗み見た。 「……」 大地はあの日と同じように肩を落としたまま俯いている。 デカい身体が蹲っていると、飼い主に怒られた大型犬のようで、 「…ぶっ…!」 玲司はついつい吹き出すように笑ってしまった。 ――やっぱ、中身は変わってねぇんだよなぁ…。 「何だよ?」 吹き出した玲司の声に、大地が仏頂面をあげる。 「いや…」 玲司は含み笑いながら仕事を続けた。 大地は良くも悪くも素直でわかりやすい。 まさに名の通り、『大地』のような男に成長した。 キラキラと目を輝かせて、玲司の試合を観にきていたあの頃から考えると、時間の流れとは偉大。 『玲兄と試合に出るのが夢なんだ!!』 ――夢、ねぇ…。 結局、同じコートに立って戦うことはたったの一度もないまま、玲司はコートを去った。 大地にはまだまだ無限の可能性がある。 それは勿論、本人の意志なくしては始まらないが…。 「今日は、部活、顔出さないのか?」 玲司の問い掛けに、 「………」 大地は不貞腐れたまま答えようとしない。 ――そういうところがガキなんだよ! [*前へ][次へ#] [戻る] |