: せっかく起き上がったのに、また押し倒される。 『お前さ、この押し倒すのなんとかしろよ』 『玲司が茶化すから!』 『んな事、言われてもなぁ…?』 大地の身体の下で、玲司はいまいち緊張感無く呑気にボヤいた。 どうしたってピンとこない。 『冗談じゃない!ふざけてもない!』 突然向けられた真剣な大地の目に、玲司はどうしていいのかわからなかった。 『俺をガキ扱いするな!』 『……』 確かに、ガキはこんな真似はしない。 あんなキスも…。 思い返してみれば、以前誰かにこうされた時、玲司は瞬間的に相手を殴り飛ばしていた。 増して、キスなんて…させるような隙を与えたこともなかった。 なんて、玲司はぼんやりと考えていたが、 『馬鹿、そういう事言ってる時点で充分ガキなんだよっ!』 『ぃてっ!』 結局は冗談にするしかなく、大地の頭をスカンッ叩くと、力一杯に押し退けてベッドを降りた。 『ったく、馬鹿力が!デカくなったのは身体だけかっ!?』 そう面倒臭そうに吐き捨てると、玲司は日報を仕上げにデスクへと戻った。 『………』 取り残された大地は肩を落として、しょんぼりと窓の外を見つめていた。 あれ以来―― 必要以上に二人きりにならないようにしている玲司。 何も考えていない訳ではない。 ただ…。 ――有り得ない。 [*前へ][次へ#] [戻る] |