: 玲司は他所行きスマイルを浮かべてすっとソファを立ち上がった。 「玲司!?」 そんな玲司の態度に、大地は明らかにカチンと来た表情を見せる。 そんなわかりやすい性格で、よくバスケットボールなんて出来るもんだ。 「保健室に用事ですか?」 「……」 更に他所行きに笑う玲司に、大地は何も答えずに黙ったまま。 デカい身体で扉にへばりついている。 「……」 それでも玲司は冷たい態度で、大地を不機嫌に見据えている。 それはそれで白地。 「……」 まるで、飼い主に怒られた大型犬よろしく、大地はじっとそこを動かない。 「松田先生、私は生徒会に用があるから出ますよ」 見かねた古賀が、立ち上がって部屋の窓を閉めると、 「あ、はい。私ももう出ます」 玲司はハッとしたようにその空気を緩めた。 「コーヒー、ご馳走様でした」 「御粗末様でした」 「じゃあ、行きますか。藤井君」 優しい物腰とは逆に、仏頂面で立ち尽くす大地の腕をグイッと乱暴に引くと、 「お邪魔しました」 玲司は足早に化学準備室を後にした。 「いーえ………」 古賀はそんな玲司を『なるほどね』と小さく笑って見送った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |