: 言葉の通り、古賀はずっと望の傍にいてくれた。 「――…あの、そろそろ戻ります」 「ん?」 「続きは寮でやります」 原稿をまとめながら、望はさっと椅子を立ち上がった。 「ああ、そうだな。もう遅い…」 古賀は外の暗がりを見つめると、同じく立ち上がって戸締まりを始めた。 望は参考にしていたファイルを棚に戻すと、原稿をクリアファイルに挟んで鞄の中へとしまった。 と、 「春日は、進路とか決めたのか?」 「え…」 古賀の急な問い掛けに、望は一瞬返答につまった。 「生徒会と勉強の両立なんて大変だろ?あ、お前は部活もやってたな?春高バレー、大活躍」 「や、オレは……そんなっ」 「やっぱり、バレー続けるのか?」 「あ…いえ、バレーは……」 いまいち話題が盛り上がっていかない。 二人きりになるとどうしていいのかわからない。 「そうか…」 古賀も困ったように頭を掻いて言葉を濁した。 ついつい、双方で黙り込んでしまう。 何ともギクシャクした空気。 望はそれを断ち切るように、 「本のっ…編集をしたいなと、思ってます」 戸惑いがちに口を開いた。 それは、本音だった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |