: 派手にビクッとして、救急箱を抱き締めた。 「真咲…」 暗がりの中、悠の声がもう一度真咲を呼ぶ。 その声は、少しかすれて気だるそうに真咲の耳に聞こえた。 「ん?」 真咲は呼ばれるままに、ベッドの端へと腰を下ろした。 ギシッと軋むベッドのスプリングが、悠に真咲の存在を知らせた。 「…痛むか?」 真咲はそっと問掛けて悠の頬に触れた。 その手は微かに震えていて、真咲は自分でも戸惑った。 「血、でてる…」 ――オレの、せいで…。 真咲はグッと奥歯を噛み締めて喉元の感情を呑み込むと、冷やしたタオルをそっと悠の頬に当てた。 「っ…」 痛んだのか、ごく僅かにだが悠がピクッと眉をしかめたのがわかった。 「あ、ごめっ…ダイジョブか?」 真咲はハッと手を引いて、慌てて悠の顔を覗き込んだ。 「大丈夫だ」 「…ぁ…」 そう静かに笑った悠の目があまりにも優しくて、真咲は一瞬にして目頭が熱くなった。 せっかく顔を洗って気合いを入れたのに、どうしようもない。 涙腺が壊れてしまったのか。 「…真咲?」 と、悠がそれに驚いて身体を起こした。 「…ごめっ、マジ……オレ、のせいでっ…」 暗闇の中で真咲がしゃくりあげる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |