: そう皮肉って身体を離すと、 「俺も、過保護だよな?」 と、小さく苦笑して見せた。 「何でだか、お前達兄弟を放っておけない。これは俺の性分なんだ。許してくれ」 「…江崎」 「ただ、お前に何かあると美咲が泣く。だからって訳じゃないが、お前には…笑っていてほしい」 周はいつも通りの涼しげな笑みを見せると、 「…手当てしてやれ」 そう早口に告げて玄関へと背を向けた。 「江崎…」 その背中を呼んだ真咲の声は、少しだけ震えて響いた。 「ん?」 「オレ…」 ドアに手を掛けた周が振り返る。 その見慣れた姿が、真咲には何故か、現実離れした絵空事のように遠く見えていた。 「…オレ、守られてたんだな?ずっと」 「……」 「……知らなかった」 「……」 胸が苦しかった。 知らないうちに誰かが動いていてくれた。 自分が情けなかった。 「そういう顔すると思ったから、黙ってたんだけどな…」 周は溜め息混じりに頭を掻くと、 「大丈夫だ、真柴は強い」 崩れ落ちそうな真咲に向かって、念を押すようにはっきりとそう告げた。 「…?」 真咲が顔を上げると、周は少しだけ悔しそうに眉をしかめていた。 「アイツは殴ってない。どんなにやられても、手を出さなかった…だから」 「……おう」 真咲はそれを聞いて、少しだけ誇らしそうに笑った。 「試すような事をして、悪かったな…」 そう言い残すと、周は真咲の柔らかい髪をクシャリと優しく撫でて、静かに201号室の扉を閉めた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |