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悠は困ったように真咲を見つめた。
「…真咲?」
もう一度声をかける。
不安を滲ませる頬をそっと撫でて、その顔を覗き込む。
「――あ、オレ…」
真咲は突然ハッと我に返った。
「や……その、何だっ…」
自分が何を言おうとしていたのかわからずに、握り締めたウエアの端を慌ててババッと手離した。
「どうした…?」
悠は真っ赤になって慌てて俯く真咲を、少し身を屈めて覗き込んだ。
悠から見ると子供のように小さい真咲。
華奢な肩も、首筋も、間近に触れてみて気づいた。
強気な瞳の表向きからはわからない、真咲の中に息を潜める儚さ。
それを「可愛い」と言うと、真咲はいつも烈火の如く顔に嫌を示して噛みついた。
「…や、何でもね…ワリィ」
悠の優しい瞳に、真咲はバツ悪そうに言葉を濁した。
「…そうか」
「おぅ」
「あ、そうだ、真咲、これ着てろ。体冷やすとよくないから」
そう言って、悠は未だ俯きがちな真咲の肩に、自分のウエアを脱いでそっとかけてやった。
「…お前は?」
「俺はこれから練習だから。それに、真咲が着てくれるなんてラッキーだろ?」
「バッ…!!」
真咲は一瞬にして真っ赤になった。
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