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――落ち着け、俺!

思い出せ!

思い出すんだ!



バクバクと高鳴る心臓を押さえて、清孝は必死に曖昧な思考を掘り返した。

隣に眠る男が誰なのか、恐ろしくて振り返ることが出来ない。


「〜〜……寒いっっ!…何だよ〜?」


男はまだ寝ぼけた口調で、焦っている清孝の背中に苦情を漏らす。

覚醒してしまえばもうはっきりとわかる。

この声は…。

この少し横柄な口調は…。

清孝は恐る恐る、膝を抱えた自分の肩越しから盗み見るように男を振り返った。



――ぅわぁ〜…ビンゴ…!



五十嵐慶太(イガラシケイタ)、大学の同級生。

自由奔放な性格で、無類の女好き。

三能の合コンキング。

いわゆる、今時の男ってやつだ。



――有り得ない…。



清孝はとりあえず脱ぎ散らかされた服を拾い上げ、全裸だった自分の身体に纏った。


「ん………安西…?」


その時やっと慶太も覚醒したようで、手早く服を着る清孝の背中を見つめてむくりと上半身を起こした。


「……」


清孝はドキッとしてベッドの端から慌てて立ち上がった。


「え…安西っ!?」


逃げるように立ち去ろうとする清孝の腕を、慶太の骨張った大きな手がガシッと掴んだ。




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あきゅろす。
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